管理費より深刻?
値上げが避けられない「修繕積立金」

Photo by Go Suzuki
もっとも、値上がりを覚悟するべきは管理費だけではない。むしろ、より深刻なのは、将来の修繕に備える修繕積立金だ。
管理費が日々のサービスに対する「出費」であるのに対し、修繕積積立金は十数年後に行われる大規模修繕工事などに備える「貯金」だ。しかし、多くの新築マンションでは、マンション会社が購入後の月々の負担額を低く見せるため、この修繕積立金を意図的に安く設定する傾向にある。仮に十数年後に修繕積立金が不足していたとしても、マンション会社は一切、責任を負う義務がないことも、意図的に安くする悪習に拍車をかけている。
購入者側も、入居してすぐには大規模修繕の必要性を感じにくいため、将来に備えた「貯蓄不足」にまで考えが及ばないケースがほとんどである。その結果、いざ大規模修繕が必要となる十数年後に、修繕積立金がまったく足りないという事態が発覚する。適切な修繕ができなければ、建物の劣化は進み、ひいては資産価値の著しい低下、いわゆる「スラム化」を招きかねない。
しかも、昨今のインフレによって修繕コストもコロナ禍前に比べても4~5割上昇している。つまり、スラム化を避けるためには、どこかのタイミングで修繕積立金の大幅な値上げが不可避なのだ。
前出の2LDK氏は、東京湾岸エリアのタワーマンションを例に、次のように警鐘を鳴らす。
「例えば『セントラルガーデン月島ザ・タワー』は修繕積立金が1平方メートルあたり150円でコストが安く感じます。しかし、周辺の築年数が経過した同じような規模・グレードのマンションでは、将来を見越して修繕積立金を1平方メートルあたり300円程度まで値上げ(適正化)した事例があります。しかも、これでもインフレ前に決められた金額であり、今後のさらなる工事費高騰に対応できるか確信が持てない水準です。つまり、同じエリアの同じようなマンションで、現在1平方メートルあたり300円未満のマンションは、将来的にはこの水準以上にまで値上げせざるをえないと想定しておくべきでしょう」
住宅ローン金利上昇より怖い!
維持費上昇が家計に与えるインパクト
現在、世間の関心は住宅ローン金利の上昇に集まっている。しかし、本当に警戒すべきは、管理費と修繕積立金の値上げがもたらす負担増かもしれない。
変動金利で数千万円のローンを組んでいたとしても、金利が0.25%上昇した場合の月々の返済増は数千円から2万円程度。利下げがあれば再び負担は減る。一方で、管理費と修繕積立金は、一度値上がりすればそれが恒久的な固定費となる。しかも、昨今の新築物件のコストを参照にすれば、合計で毎月数万円単位での負担増になる可能性がある。このインパクトは、金利上昇による返済増をはるかに上回る可能性があるのだ。
これからマンションを購入する人は、物件価格やローンの返済額だけでなく、将来的な維持費の値上がりまでを織り込んだ、長期的な視点での資金計画が不可欠だと言える。すでに所有している人も、自身のマンションの管理組合の財政状況や長期修繕計画に関心を持ち、維持費の上昇に備えた家計管理を見直す時期に来ている。
管理費や修繕積立金などはマンションを所有する限り永遠に払い続けるコストだ。ファミリー向けマンションであれば、新・既存を問わず、月々の維持費が5万円以上になる未来も想定しておいたほうがいいだろう。