8日の新型リーフの発表で、磯部CVEは「EV普及の壁に挑む」ことを強調していた。確かに、この3代目リーフは、航続距離、充電時間、充電インフラ、価格といったEVの多くの課題に大胆に挑んで進化させたものだが、日本市場の実態を見ると大きく販売を伸ばす、販売拡大と収益向上に貢献する車種ではないことは容易に想像がつく。

 日産の国内販売が、かつてのトヨタに比肩する両大手として日本市場を引っ張っていた時代はとうに終わって、国内販売台数5位の座に甘んじているのが実態だ。25年度上半期(4〜9月)の車名別販売でも、日産車はベスト10から消えている。

 また、日本国内市場でのBEVのシェアは2%未満で、世界でも遅れている。その理由は、HVが主流だからだ。ある意味で、トヨタの「プリウス」以来のHV戦略が浸透していった結果だろう。

 ここへきてEVを投入する国産・輸入各社の動きが活発になってきてはいる。ホンダが軽自動車EV、スズキがインド製小型EVを発表したほか、中国BYDが軽EVを開発して26年に投入し、韓国・起亜もEVバンを26年春に投入する予定だ。だが、日本市場で、どのEVがユーザーから受け入れられるのか、充電周りの課題と補助金頼みの価格から脱してこそ、本格普及の道となるだろう。

 新型リーフがエスピノーサ日産体制での経営再建に向けた第1弾であることは確かだが、少なくとも国内販売の「救世主」になることは難しいだろう。

 日産は、すでに22年に三菱自動車工業と共同開発した軽EV「サクラ」を発売している。国内販売統括の星野朝子副社長(当時)は「サクラは、日本市場のゲームチェンジャーとなり、EV の普及促進に弾みをつける存在になると確信している」と強調し、発売当初こそ大きな話題を呼んだものの、やはり時間の経過とともに存在感は薄れている。