日産のラインアップには、この軽EVサクラとクロスオーバーEV「アリア」があり、この中間に位置付けられるのがリーフだ。しかし、リーフも新型車発売の後の来年2月頃に、300万円台の普及モデルを“後出し”にするなど、ユーザー目線に欠けている印象もある。
ちなみに、リーフの生産工場は、初代リーフが国内の追浜工場から生産開始し、その後、米スマーナ工場と英サンダーランド工場でも生産していたが、この3代目リーフの立ち上がりとともに、追浜工場から栃木工場に移管された。新型リーフの販売による栃木工場の稼働率向上に期待がかかるとともに、リーフが主力生産車だった追浜工場が27年度末で車両生産を終了するという象徴的な動きと重なる。その追浜工場を巡っては、水面下で台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)との売却交渉が決裂したことが、この新型リーフ発表のタイミングと合わせるように伝えられた。
ともあれ、ゴーン政権の絶頂期にEVの世界覇権に向けた嚆矢(こうし)として放ったリーフが、いまや3代目となり、6月にワールドプレミアとして世界初公開され、今回こうして国内市場での販売となった。
だが、初代リーフの発表会では、当時のゴーン社長が運転して、隣の助手席に小泉純一郎・元首相が同乗して現れた、あの光景を筆者は思い出す。それだけリーフは、日産が国を挙げて期待を掛けたEVだったのだ。それに比べると、今回の3代目リーフの発表会は、エスピノーサ社長が壇上に姿を見せず、チーフエンジニアと国内営業担当者の説明に終始した。
社運を懸けて当初開発されたリーフが再び、大幅な赤字転落から経営再建を目指す日産の第1弾世界戦略車となるのは皮肉な流れだが、EV逆境の中でどのようなインパクトと販売動向を見せるのか、注目したい。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)