新刊『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』(ロジャー・ニーボン著/御立英史訳、ダイヤモンド社)は、あらゆる分野で「一流」へと至るプロセスを体系的に描き出した一冊です。どんな分野であれ、とある9つのプロセスをたどることで、誰だって一流になれる――医者やパイロット、外科医など30名を超える一流への取材・調査を重ねて、その普遍的な過程を明らかにしています。今回は、出世できる新人が最初に学ぶたった一つのことを、『EXPERT』の内容を元にお届けします。(構成/ダイヤモンド社・森遥香)

雑務の裏に隠された出世の条件
転職や新しい職場でのスタート。誰もが「成果を出して認められたい」と思いますが、実際に最初に任されるのはコピー取りやデータ入力といった雑務です。多くの新人はそこでモチベーションを失ってしまいますが、出世できる新人は雑務こそ大切にします。
「退屈な反復作業によって得られる重要な成果の一つは、のちに必要になるスキルが身につくということだ。好きであろうとなかろうと、血液が採取できなければ外科医にはなれないし、ポケットフラップを作れなければ仕立て職人にはなれない。」
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.88より
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.88より
出世の分かれ道は「輪の外側」にある
もう一つ、雑務が持つ意味を理解できるかどうかが、出世の分かれ道になります。
「もう一つ重要なのが、その仕事をしている人びとの集団に加われるということだ。社会人類学者のジーン・レイヴと教育者のエティエンヌ・ウェンガーは、そのような集団を『実践のコミュニティ』と名付けた。」
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.88より
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.88より
新しい職場はひとつのコミュニティ。最初は「外側の円」に立つ存在ですが、雑務を通じて関わりを深めるうちに、内側へと入っていく。ここで「周縁にいることの意味」を理解できる新人は、その後のキャリアで一気に加速します。
「教えてもらえない」環境で伸びる人
さらに大事なのは、不親切さをどう受け止めるかです。
「実際の仕事を通して学ぶというのは、怖いことでもある。仕事の方法や仕組みを教えてもらえることもあるが、ふつうはそんなことはなく、当然知っているだろうという扱いをされる。」
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.89より
『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』p.89より
新人が知っているはずのないことを前提に仕事が進んでいく。ここで「理不尽だ」と不満をこぼすか、食らいつく姿勢を見せるか。この差が、出世するかどうかを決定づけます。
(本記事は、ロジャー・ニーボン著『EXPERT 一流はいかにして一流になったのか?』に基づいた記事です。)