ディベースメント(通貨の価値下落)への懸念は至る所にあるように見える。ただし、それが最も明白に表れるはずの債券市場だけは例外だ。確かに、今週は政治の影響で世界の長期債利回りがわずかに上昇した。日本の与党・自民党は大規模な支出と低金利を好む総裁を選出し、フランスでは、緊縮予算に反対する議会との折り合いがつかず、またしても首相が退陣した。投資家は金相場の急騰について、政治家や中央銀行が債務問題の安易な解決法としてインフレを選択するのではないかという不安の表れだと指摘している。それでも、債券市場は依然として米国のインフレが制御不能に陥ることはないと確信している。なぜか。債券市場では見解が分かれている。米国の雇用拡大が鈍化し、低成長の前触れになるという懸念が出ている一方、政治家がくすぶるインフレの残り火に油を注げば、いずれその火は再び燃え上がると恐れる声もある。