トランプ人脈 全解剖 #2Photo:Bloomberg/gettyimages

米国では政権交代のたびに政府高官も入れ替わる。日本の局長クラスに当たる次官補ポストまでが時の政権により「政治任用」され、政治任用の総数は約4000人に上るといわれる。人的リソースに限りがある中で、人材を供給できる組織は実は限られる。特集『トランプ人脈 全解剖』の#2ではトランプ政権を支える人材の供給源をひもとき、政権を陰で動かす二大シンクタンクの実態に迫る。(共同ピーアール総合研究所主任研究員 渡辺克也)

ウォルツ大統領補佐官が配置換え
トランプ政権内部の権力闘争

 トランプ人事で初の“脱落者”が出た。

 5月1日、ドナルド・トランプ米大統領は、マイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)を国連大使に配置換えすることを発表した。第2次トランプ政権発足以降、閣僚級の交代は初めてだ。

 この人事を巡り、通信アプリ「シグナル」で米軍の軍事情報を漏えいさせたことを受けた、事実上の更迭という点を強調する報道が目立つ。ニクソン政権でのウォーターゲート事件になぞらえて「シグナルゲート」と呼ぶメディアもある。

 しかし、ウォルツ氏は共和党内で勢力を落としているネオコンの出身であり、本来は権力闘争の側面が大きいだろう。

大統領補佐官から国連大使への配置換えが決まったマイク・ウォルツ氏大統領補佐官から国連大使への配置換えが決まったマイク・ウォルツ氏 Photo:Bloomberg/gettyimages

 トランプ氏は大統領選挙で勝利した直後の2024年11月から、政権メンバーの指名を開始した。こうした人事について、メディアが報じる内容は、メンバーの経験不足やスキャンダルに終始している。また、政府効率化省(DOGE)を率いるイーロン・マスク氏や、その他IT長者の思想に焦点を当て、トランプ大統領が「独裁者化」しているという論調も目立つ。

 しかし、日本と比べても、政治学的には三権分立がより発達しているとされる大統領制の米国で、独裁は可能なのだろうか。また、トランプ政権には本当に政治のアマチュアしかいないのか。

「トランプ大統領は元々、人気テレビ番組の司会者だったことを忘れてはならない」

 これは、筆者が25年1月に大統領就任式に出席するためワシントンを訪れた際に、共和党関係者から受け取った言葉だ。

 トランプ政権はどんな人材に支えられているのか。次ページでは、トランプ政権の人材供給源となっている二大シンクタンクの実態とトランプ大統領への影響力をひもとく。