
米大統領と上院・下院の全てを制する「トリプルレッド」の共和党。ただ、上院・下院における議席数は民主党と僅差のため、トランプ政権運営の基盤は脆弱で早晩行き詰まるという見方も根強い。特集『トランプ人脈 全解剖』の#3では、米議会の重要人事から、トランプ政権の出世頭と、政権安定運営のキーマンを解き明かす。(共同ピーアール総合研究所主任研究員 渡辺克也)
トリプルレッドの共和党
トランプ政権の基盤は脆弱なのか
第2次トランプ政権の発足から約4カ月が経過した。
共和党は大統領・上院・下院の全てを制するいわゆる「トリプルレッド」と呼ばれる状況である。一方で、大統領選挙こそ接戦州全てでドナルド・トランプ氏が勝利したものの、上院・下院における民主党との議席数差は僅差にとどまっており、政権運営は早晩行き詰まるという見立ても根強い。
果たしてこの見方はどの程度正しいのだろうか。足元ではトランプ氏が掲げる大規模減税を巡り、激しい攻防が米議会で繰り広げられている。米国の大統領には法案提出権がないため、議会のパワーバランスいかんでは、米国経済の先行きに大きな影響をもたらすだろう。
確かに、共和党の議席は上院53議席・下院219議席と、過半数となる上院50議席・下院218議席に対して、共に猶予は極めて少ない。
特に、長時間演説で法案審議を遅らせて廃案に追い込む議事妨害「フィリバスター」が制度上認められている上院では、通常の法案審議の場合、民主党からも協力を取り付けなければならない。その上、日本と異なり党議拘束がない米国では、共和党内部からも度々造反が出ている。これらは厳然たる事実として正しい。
しかし、だからといって第2次トランプ政権運営の基盤は脆弱で、早晩行き詰まるという見方は誤りだと筆者は考える。次ページでは、それを象徴する米議会の二つの「重要人事」やトランプ政権の出世頭と、政権安定運営のキーマンを解き明かす。