彼によれば、これまでわかっているのは、「乳幼児の時期に限っては、褒めて育てるのが良い」ということでした。一、二歳くらいまでに褒めて育てた子どもたちと、そうでない子どもたちとではその後の社会での能力に差が出たといいます。
別に大きくなったら褒めなくてよいというのではなく、基本的に褒めて育てるのは大切だともいいます。もちろんしつけは大切ですが、とくに乳幼児期には褒められることのほうがはるかに必要だということです。
「お受験」教育は勧められない
ヒトの脳のつくりは変わっていない
一方で、幼い時から「お受験」に代表されるような類の教育をすることは決して勧められない、というのが小泉さんの話でした。
一時期から流行するようになったものに、早期英才教育やコンピュータのプログラミング教育などがあります。こうしたものは、実感として私もあまり良いものだと思っていません。
こう言うとまた「時代が違うよ」と思う方もいることでしょう。
しかし、時代が変わってもヒトの脳そのもののつくりは変わっていないのです。AI(人工知能)の急速な進化に伴って、脳が進化するなどということはありえません。したがって、人間の成長もそんなに変わるはずがありません。
この点を頭に入れておかないと、科学技術の進歩に合わせて人間のほうを変えようという本末転倒の発想になってしまいます。
冗談ではなく、技術によってスーパーマンのような「超人」を作ろうとしかねないのです。ヒューマンエンハンスメント(人間強化)などという試みを真剣にやっている人たちもいます。遺伝子工学などの科学技術を用いて、人体そのものをバージョンアップしてしまおうということですから、まるでアメコミ映画です。しかしこれには何か無理があると思うのが普通の感覚でしょう。
人間の能力について考えるのならば、普通の人を超人にするなどということに知恵を使うよりも、もっと大切な問題があります。