「ケーキの切れない非行少年」を
どう考えるか

 『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)の著者、宮口幸治さんは「境界知能」の子どもに関する問題提起をしています。世の中には一定数、知的障害とまではいえないけれども、IQが低い人が存在しています。IQでいえば、七〇~八四くらいだそうです。この人たちは境界知能の持ち主とされています。

 本のタイトルの由来は、宮口さんが医療少年院で出会った子どもたちです。宮口さんは児童精神科医として精神科病院や医療少年院に長年、勤務した経験があります。

 彼らに「丸いケーキを三等分にしてください」というテスト問題を出しました。紙には円が描いてある。その円の中心から放射状に直線を引いて三等分すれば正解です。

 ところが、一定数の子どもはこれができずに、縦に二本線を引いてしまったり、とりあえず半分にしたあとで困ってしまい、苦し紛れに横線を引いたりするというのです。

 境界知能の子どもにとっては、このレベルの問題が難しい。彼らは、知的障害にはあたらないため、他の子どもと同じ学校に入り、とくに配慮もされないまま教育を受けることも珍しくありません。

 しかし、その結果として、いろいろな問題が生じます。怠け者あつかいされ、愚鈍だとからかわれるのです。本当は怠けているわけではないのですが、理解してもらえません。親ですら彼らの特性を理解してくれないこともあります。そういうことが重なり、彼らは孤立していきます。