
Photo: Anna Ottum for WSJ
米ジョージア州中部にある韓国・現代自動車の巨大な自動車工場は、米移民・税関捜査局(ICE)による米国史上最大規模の移民摘発の標的となる前、作業員の間で別の評判があった。それは、危険で命を落とすこともある建設現場というものだった。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が連邦記録を調査したところ、現代自動車が2022年にこの76億ドル(約1兆1570億円)規模の複合施設の建設を開始して以来、3人の作業員が死亡している。同規模のプロジェクトとしても異常に多い死者数だ。他にも十数人の作業員がハーネスなしで転落したり、フォークリフトに挟まれたりして重傷を負っている。
現・元作業員24人(その多くは建設作業の監督を支援した安全調整担当者)はインタビューで、経験の浅い移民労働者が多数おり、しばしば安全基準が緩く、事故が頻発する現場の実態を語った。現代自動車は作業員の適切な訓練の実施を怠り、安全規制当局も作業現場での違反行為を防止する措置をほとんど講じなかったという。
従業員らによると、現代自動車は猛烈なペースでの建設を課し、現場に100社以上の請負業者が入り組んでいたため、安全基準の徹底が困難だった。場合によっては、作業員が安全に業務を遂行していることを確認する安全担当者が不足していたという。複合施設の一部では現在も建設が続いている。
昨年現場で安全管理者として勤務したグレッグ・ディメント氏は、米連邦労働安全衛生局(OSHA)と州当局は「目を背け、彼らのやりたいようにやらせていた」とし、OSHAは自分の苦情に対応しなかったと話した。建設業界で30年以上働いた後、現代自動車での経験がきっかけで業界を完全に離れることにしたという。