
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第15回(2025年10月17日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
傅の玉手箱の中身は……
堤真一、早くも退場で驚いた。
「食べた食べた食べられた」と食欲が出てきた傅(堤真一)。
元気になってきて、タエ(北川景子)から謎の「玉手箱」を用意してもらって何かを企んでいる様子。
うれしいトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)は三之丞(板垣李光人)に報告するが、「ふーん」と冷たい。第14回の終わりであの秘密を聞いてしまったせいだろう。
工場では反物にまた傷がついていたと平井(足立智充)が、せん(安達木乃)に手を上げていた。
平井の役割が不憫(ふびん)である。ひとりだけ悪者に描かれていて。以前だと、完全に悪役として、ひどいなあと嫌えたが、昨今、メタ的な視点が当たり前になっているので、平井は作劇上、悪者がひとり必要で、こんなふうに絵に描いたような悪者になっているのだろうと思ってしまうから、同情を禁じ得ないのだ。殴ったあと、動揺しているので、追い詰められてつい手が出てしまったのはわかる。
そのとき、出入り口のほうで大きな音が。床には、落ちた箱からカステラが飛び出してしまっていた。玉手箱はカステラだったのだ。高価な品をもったいない!
傅は苦労をかけている女工たちに差し入れしようと持ってきたのだろう。
少し元気になったから、工場に顔を出そうという従業員思いの傅。それなのに。
「なんじゃこのありさまは」
傅が平井と三之丞を叱りつける。そりゃあそうだ。目を離している間に、職場がハラスメントの嵐になっていたのだから。信頼していた平井が人が変わったようになっていて、目を疑ったことだろう。
ショックのせいか、やっぱりまだ立ち上がるのは無理だったのか、傅は胸を押さえ膝をついてしまう。
「おじさま!おじさま!」とトキが駆け寄る。
三之丞は何もできない。それどころか、とんでもないことを言い出した。