お嬢様にもほどがある! タエ(北川景子)おかゆを焦がすだけでなく…浮世離れしすぎた「信じられない」エピソード〈ばけばけ第12回〉『ばけばけ』第12回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第12回(2025年10月14日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

「一日一反」雨清水家の工場、ハラスメントの温床に

 第11回のラスト、タエ(北川景子)の苦渋に満ちた表情が印象的だった。

 雨清水家の長男・氏松(安田啓人)が自信をなくして出奔してしまった。急遽、工場を任されたのは三之丞(板垣李光人)だ。

 氏松の代わりに傅(堤真一)が金策に走らないとならないため、工場で傅の代わりをやるように言われた三之丞だが、無表情。

「あまりに久々に父上とお話したので。私の名前を覚えていてくれたんですね」と痛烈な嫌みにも聞こえるような返事をする。現代人の庶民の筆者としてはどういう家族なのかと思うが、武家社会はこんな感じだったのだろう。

 三男でもいいのかと確認すると、氏松はいないし次男はすでに亡くなっており、「三男のおまえに頼むしかないだろう」とひどい言い方。傅もトキや女工にはいい顔するのに、なんでこんなに三男を雑に扱うのか。

 強引に傅の代わりをさせられた三之丞。先週は工場の女工たちと軽口を叩いていて、お金持ちのぼんぼん感を出していたが、もはやそんな軽い感じではいられない。

 父の座っていた場所(背後に雨清水家の立派な羽織がかけてある)にちょこんと置物のように座るだけ。

 それを見ている女工たち。「微動だにせんね」「なんか同情するな」「瞬きひとつせんね」「瞬きはしちょるでしょ」「ほらした」と遠くで三之丞をおもしろがっている。不憫(ふびん)だ。

 番頭の平井(足立智充)は、第11回では仏のようだと言われていたのに、鬼の番頭に早変わり。工場の再建策として「一日一反」織物を作るよう女工たちに強いる。

 こういう番頭の横暴を抑えるのが、工場長たる役割なのだが、三之丞は――。