メルカリ ハロとタイミーのアプリケーションのアイコン画像失敗したメルカリ ハロと一人勝ちのタイミーの勝敗を分けた戦略の違いを分析した 撮影:ダイヤモンド・ライフ編集部

スキマバイト市場に参入し、王者タイミーを脅かすかに見えたメルカリが、わずか1年9カ月でまさかの撤退。登録者数では上回っていたメルカリ ハロがなぜ敗れ、タイミーは“一人勝ち”できたのか?手数料は同じ30%という条件の中、多くの人が見落としている、両社の明暗を分けた「戦略」の違いを解き明かす。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

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手数料は同じなのになぜ?
メルカリだけ“有料化”で失速

 メルカリは今年の12月でスキマバイトの仲介サービス「メルカリ ハロ」から撤退すると発表しました。スキマバイト事業に参入してわずか1年9カ月での終了となります。

 スキマバイト市場には2023年から24年にかけて大手が新規参入を始めました。メルカリはその有力な一社で、今年6月に登録ワーカー数は1200万人を超えました。同じ時期、タイミーのワーカー数は1190万人(2025年7月末)でしたから、会員の集客数ではメルカリの知名度が上回っていたことになります。

 にもかかわらず、収益が伸び悩みました。競合のタイミーが推定市場シェア50~60%と一人勝ちに近い状況なのに対して、メルカリのシェアは10%以下だったと見られます。

 転機となったのがサービスの全国展開後一年の節目の2025年4月に、サービス利用料の有料化に踏みきったことだといいます。それまでサービス普及のため事業者の利用料を無料にしていたところから、給与と交通費の合計の30%をサービス利用料として徴収することにしました。そこで求人数が頭打ちになってしまったといいます。

 とはいえタイミーも成約時に事業者が支払う手数料は30%と同じ水準です。なぜタイミーが一人勝ちしている一方で、メルカリは撤退に追い込まれたのでしょうか。その理由を解説してみたいと思います。

 現在、スキマバイト市場に参入している企業の中でスポットワーク協会に所属しているのはタイミー、メルカリを含め9社あります。ディップやシェアフルのようにアルバイト情報市場からの参入もあれば、LINEスキマニを運営するLINEヤフーのようにメルカリ同様に業界外から新規参入した企業もあります。

 興味深いことにタイミーの競合の中には20~25%と事業者側の手数料をタイミーよりも低く設定する競合もあります。それなのに手数料30%のタイミーのほうがよく使われている。一方で同じ30%のメルカリは手数料有料化によって事業が伸び悩んだと分析している。ここがタイミーの一強状態について不思議な点に見えるかもしれません。

 実はここがタイミーの強さ、そしてメルカリの失敗を理解するための最大の鍵です。