やり方はPayPayと同じ
なぜメルカリ ハロは失敗した?

 メルカリ ハロに限らず、新しく求人マッチングサービスを始める場合、事業者が負担する費用は無料で始めるのが定石です。無料なので使ってくださいと事業者に提案して、導入社数を増やします。求人ではありませんが、キャッシュレスを普及させる際にPayPayがとったのも同じやり方です。

 ところがサービス運営をする側としてはどこかで有料化に踏み切らないといけません。業界が違いますがPayPayの有料化の事例がこのメカニズムを説明するのにわかりやすいと思うので紹介させてください。

 PayPayはこの無料のサービス期間をサービス開始当初から「約3年間」と公表してきました。さらに有料化が実施されるときもクレジットカード会社よりも安い手数料を設定するとしていました。

 このように企業が導入しやすいルールにしたことで、結果的にそれまでキャッシュレス後進国だった日本で、劇的にキャッシュレス決済が広まりました。2018年まではわが国では現金を持ち歩くのがあたりまえだったのが、わずか数年で買い物はスマホで行うのがあたりまえというパラダイムシフトが起きたのです。

 それで2021年10月に、当初の約束通りPayPayは手数料の有料化に踏み切ります。当時、中小零細の小売業・飲食業の現場では、「困った。コロナ禍でただでさえ苦しい中で、手数料がとられるのは痛い」という声が聞かれたものです。

 にもかかわらず、現場での決済が現金に戻ることはありませんでした。理由はもうPayPay抜きでは商売ができないからです。

 実は求人サービスもこれと同じメカニズムで運営されています。タイミーのような求人仲介のプラットフォームを運営するには最低でも年間数十億円規模の巨額な投資が必要です。タイミーの場合、2024年10月期の売上高が269億円、営業利益が42億円ですから、差し引きで年間230億円程度の運営経費がかかっていることがわかります。