米製造業の復活、原動力はロボット米オハイオ州トロイにある金属加工会社レイマスでは、機械を管理する協働ロボット「コボット」がコンピューター数値制御ミルから材料を出し入れする

 全米の小規模工場で機敏に動くロボットがあらゆるものを作っている。人工知能(AI)スーパーコンピューター用の部品も、米国の未来の海軍兵器に使用される外殻構造もだ。

 協働ロボット(コボット)はかつて、大手メーカーだけに許されたぜいたくだったが、小型で賢く、柔軟で安価なコボットが登場したおかげで、規模の大小を問わずあらゆるメーカーで自動化が進んでいる。こうしたコボットはあると便利、というだけの存在ではない。遅々として進まない、足元のおぼつかない米製造業の復活はコボットなしでは不可能だろう。

 物理的なものを作る米国企業の数は2014年に過去最低を付けて以降、増加している。しかし、熟練工が高齢化し、若者がその後継者になれない中、企業は終わりが見えない労働力不足で身動きが取れずにいる。

 中国が事実上の「世界の工場」になったのは、膨大な数のエンジニアや技師、機械工がいることもあるが、200万台を超える産業用ロボットのおかげでもある。米国は中国に奪われた生産の一部を取り戻そうとしているところで――このプロセスは「リショアリング(生産拠点の国内回帰)」と呼ばれる――、ロボットのおかげで労働者の生産性が4倍になるケースもある。

 企業が過剰な自動化を行う危険は常に存在する。リセッション(景気後退)が始まったり、需要が枯渇したり、設備がバランスシートを圧迫したりすると、このわなにかかった多くの企業が倒産した。ロボットが何でもできるという考えにも危険が潜む。ロボットを導入するとほとんどの場合、一緒に働く人間を確保する必要がある。

 しかし、少なくとも今のところは、米国に製造を取り戻そうとする動きと、AI主導の米国経済を後押しする工業製品の需要が、自動化の普及とイノベーションをけん引している。

コボットがやって来た

「自動化はリショアリングの鍵だ。単純明快だ」。金属加工会社レイマス(オハイオ州トロイ)の最高経営責任者(CEO)兼社長のグレッグ・ルフェーブル氏はそう話す。

 レイマスは食品用機械、土木機械の部品、データセンター用サーバーのキャビネットなどを製造している。ルフェーブル氏が2019年に買収したとき、同社は創業から40年ほどたっていたが、ほとんど自動化されていなかった。2年後、同氏は軽量かつ安価で、プログラムがしやすく、人間の近くで安全に使えるコボットを導入した。現在は13台を保有している。