荻野屋を代表する駅弁「峠の釜めし」荻野屋を代表する駅弁「峠の釜めし」。温かい状態で提供したことが話題になり、1958年の販売開始から現在まで、累計1億8000万個を売り上げている

冷たくてもおいしく、持ち運びに便利な「駅弁」。旅のお供として長年親しまれてきたが、近年、駅弁事業者の廃業・撤退が相次いでおり、危機的状況にあるという。人々の旅情を彩ってきた駅弁の今に迫る。(清談社 真島加代)

旅行ブームとともに隆盛
140周年を迎えた「駅弁」

 駅の構内で購入でき、目的地に到着するまでのあいだに楽しむ「駅弁(駅売弁当)」。2025年に販売開始から140周年を迎えた駅弁は、長年にわたり、私たちと旅路をともにしてきた。

「気がついていない方も多いかもしれませんが、正式に『駅弁』を名乗っている商品の外装には『駅弁マーク』が記載されています。それらは国鉄時代に構内営業権を付与され、業界団体の構内営業中央会に入会している事業者の駅弁が対象です。地域の郷土料理や有名食材を使っている駅弁も多いですね」

 そう話すのは、株式会社荻野屋6代目代表取締役社長・高見澤志和氏。同社は、駅弁が誕生した時代から駅構内での弁当販売に携わってきた老舗企業だ。

「駅弁は鉄道の発達とともに広がっていきました。昭和期に人々の暮らしが豊かになり、旅行ブームが起きると、移動中に食べるものといえば駅弁。1964年の東海道新幹線の開業も相まって、さらに身近な存在になりました。当社の駅弁の場合は、軽井沢に向かう旅行者がピークだった80年代~90年代に、非常に多く購入されていましたね」

 長い歴史のなかで、人々の旅情を彩ってきた駅弁は今、苦境に立たされているという。