心配のない不整脈
問題のある不整脈の違いとは

 ひとつには「心房細動による心原性脳塞栓症」という病気が突然死につながる場合があります。心臓の拍動が完全に乱れ、心臓の四つの部屋(右側に右心房と右心室、左側に左心房と左心室)のうち左房の血液の流れが悪くなるので、ここに血栓(血のかたまり)ができやすくなるのです。左房内の血栓が脳に飛ぶと、脳血栓塞栓症(脳梗塞)が生じてしまいます。

 一方で脈が飛ぶような自覚症状がある「心室性期外収縮」「心房期外収縮」と呼ばれる不整脈は、心配のないことがほとんどです。ただし、心室性期外収縮が連発したり、これが続いて心室頻脈となると、心室細動という致命的な不整脈になる危険性があります。

 とはいえ正確なところは精密検査をしてみなければわかりません。さまざまな不整脈のタイプがあり、危険度や重症度が全く異なるのです。

 ですからしばしば動悸を感じる人、【脈の不整】を感じる人は、放置をせず、24時間ホルター心電図で診断を受けておくと安心でしょう。今の時期はマラソン大会も多いですが、過去には一見健康そうなランナーが倒れて命を失ってしまう事故もありました。これも不整脈が原因の可能性が高いです。

 日頃症状がない人も、大会前に心電図で異常がないかどうかチェックをしておきたいですね。特に血圧が高めの人は、運動によって血圧が上がると心臓に負担がかかって不整脈が起こる可能性があるので気をつけましょう。

20代でも動脈硬化は進む
50代は血管が詰まるリスク大

 不整脈以外では「血管」が原因で、突然死するケースが多いです。

 この大きな要因は、動脈硬化。高血圧症や脂質異常症、糖尿病症の生活習慣病うち一つでも発症している人は、たとえ20代であっても動脈硬化が進み始めます。私が診た患者さんでプラークがあった最も若い人は、高血圧症と糖尿病のある27歳の方でした。

 プラークというのは血管の内膜が厚くなり、中に“出っ張ったもの”です。これが大きくなると血管内が狭くなりますし、プラークができることで血栓もできやすくなります。

 生活習慣病がある人は30代になるとプラークができ始め、40代になるとプラークが大きくなり増えていきます。もっと進むと、血管内の狭窄(きょうさく。血管内が狭くなること)が生じてきます。さらにそのまま50代になれば、血管が詰まってしまうリスクが高まります。

 脳の血管が血栓で詰まれば脳梗塞、血管が破れれば脳出血が起こり、心臓に血液を送る冠状動脈が狭まって血流が一時的に減少すると狭心症に、血流が途絶すると急性心筋梗塞の発症になってしまうのです。

 血管の老化や動脈硬化の程度は、痛みや自覚症状はなく、一般的な健康診断でも正確にはわかりません。ただし、【胸のレントゲン写真】をよく見れば、“全身の動脈硬化の兆し”を見つけられることもあります。