
疾患による突然死は毎年約8万人程度ともいわれ、実は働き盛りの世代の発症が非常に多いといいます。体に表れる兆候や兆しを確認する方法について、長年、平成横浜病院で総合健診センター長を務めてきた東丸貴信医師に、ジャーナリストの笹井恵里子さんが聞きました。(東邦大学名誉教授 東丸貴信、聞き手/ジャーナリスト 笹井恵里子)
寒暖差が大きいと
突然死するリスクが高まる
夏日かと思ったら急に初冬のような気温の低下が起きたり、日中は暖かくても夜は冷え込む――秋は気温の変動が激しいですよね。こういった時期は心筋梗塞や狭心症、脳卒中、不整脈といった心血管病の発症に注意が必要です。
前日に比べて気温が5度以上も上下する日は、心筋梗塞の発症が増加するという海外の報告があります。一般的に気温が低いと交感神経が活性化して血管が収縮し、血圧が上昇します。また体温を上げるためにアドレナリンなどのホルモンが多く分泌され、それによって血液が固まりやすくなるのです。一方で気温が高いと、副交感神経が活性化して血管が広がり、血圧が下がります。
ですから暖かい日が続いて、急に5度以上も気温が下がれば、血圧の急激な上昇や心拍数の増加で、突然死するリスクも高まるのです。
突然死とは、症状の発現から24時間以内の予期せぬ死亡を言います。その中でも、心疾患による突然死は毎年約8万人程度ともいわれ、実は働き盛りの世代の発症が非常に多い。しかし突然死は、基本的に「検査」でなければ精度の高い予知は難しいのです。
その中でわずかに体に表れる兆候や、また健康診断レベルでわかることを今回お伝えしたいと思います。
脈拍が「150」以上の頻脈は
病的な不整脈が隠れている危険
まずは【動悸(どうき)】です。もちろん運動した時、興奮した時などにドキドキとした動悸がし、脈が速くなるのは、たいてい問題はありません。脈拍でいうと、運動後は安静時のおよそ2倍、120くらいまで上がるでしょう。
ところが脈拍が「150」以上の頻脈になってしまうのは、病的な不整脈が隠れているかもしれません。計測が難しいですが、スマートウオッチなどで確認できます。
また安静時、特別に運動をしていない時にドキドキとした動悸がすることも、特殊な不整脈が起こっている可能性もあります。自分で脈を測ってみて、速すぎ(頻脈)、遅すぎ(徐脈)たり、もしくは一定しない、“不規則さ”(不整)を感じる人も注意が必要です。