動脈硬化の「成れの果て」
血管の瘤は50代から急増

 動脈硬化が進み、内膜が厚くなったり部分的に壁が弱くなったりして、血管が外に膨れてきます。大動脈や末梢の動脈などがたんこぶのように盛り上がった状態です。動脈硬化の“成れの果て”といっても過言ではないでしょう。

 血管の瘤は、50代から急増します。胸部や腹部の大動脈をはじめ、頸動脈、脳動脈、下肢動脈など、全身の至るところにでき、できた場所によって胸部大動脈瘤、脳動脈瘤などと呼ばれます。瘤は人知れず大きくなり、破裂すれば命を奪う可能性が高い。

 ところが動脈瘤があるだけなら痛みなどの症状はほとんど出ず、検査しないとまず気づきません。また一度できた瘤は自然に縮小することはほとんどなく、年に数ミリずつ拡大します。特に喫煙者や呼吸器疾患がある人は拡大スピードが速いでしょう。

怖いのは胸部大動脈瘤
致死率は90%以上

 瘤が3センチ以上になると大動脈瘤と呼ばれ、4センチくらいになると拍動を感じることがあるかもしれません。また場合によっては次のような症状が表れることがあります。

・胸部大動脈瘤――声がかすれる、飲み込みにくい、背部痛、咳(せき)
・腹部大動脈瘤――腹痛があって鈍い痛み、不定の胃症状や腰痛、下肢のけん引痛(筋肉が突っ張って痛む)、下肢の虚血痛(歩くと下肢が痛くなり休むと回復する)

 瘤の直径が5センチを超えると破裂するリスクが高くなり大変危険です。怖いのは胸部大動脈瘤で、破裂すればそのままショック死することがほとんど。致死率は90%以上といわれます。動脈瘤を治す薬はありませんから、検査で瘤が見つかったら破裂防止のため血圧コントロールが必要です。

脳にできた動脈瘤が破裂すると
「くも膜下出血」を発症

 胸や腹ではなく、脳にできた動脈瘤が破裂すると、「くも膜下出血」を発症し、これも命に関わります。

 脳の動脈瘤が破裂する際は、胸部と違って必ずしも血圧が上がるとは限りません。ですから予測が難しいのですが、日頃から【頭痛】がある人は、脳に動脈瘤がないかどうか一度MRI(磁気共鳴画像)検査をしておくといいでしょう。

 体に表れる突然死の兆候として、さまざまなものを取り上げました。

 基本的には検査をしなければその予兆をつかむことは難しいのですが、自分でできることとして、脈をとる習慣や血圧を測ることは日々行いたいですね。また大動脈解離発症の危険因子となる「肥満」は、生活習慣病などほかの病気のリスクも上げますから太り気味の人は改善しましょう。

 そして健康診断の胸部レントゲン検査で大動脈石灰化が起きていないかの確認や、動悸や頭痛があれば一度精密検査を受けておくことが大切です。

 次回は、突然死を防ぐため、50代になったら一度は受けてほしい検査をご紹介します。