フォロワー3000人で「タダ飯生活」→でもそれ、法的にアウトかもしれません写真はイメージです Photo:PIXTA

企業がインフルエンサーに無料で商品やサービスを提供し、SNS投稿されたにもかかわらず、広告であることを明示しないのは違法な行為だ。これはステルスマーケティング(いわゆるステマ)と言われるが、摘発されるのは大手企業や有名人、数万人のフォロワーがいるインフルエンサーで、自分は無関係と思うかもしれない。しかし、ステマはもっと身近なものになってきているようだ。(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)

フォロワー3000人で無料招待のオファー殺到?

 先日、年の離れたある知人と食事をした際、思いがけない話を聞いた。

 彼は約1カ月前からSNSで食べ歩きの写真を投稿し始めたという。といっても、グルメ投稿はSNSの定番ジャンルだし、最初は筆者も「そうですか」と軽く受け流しただけだった。

 ところが、彼はただの投稿者ではなかった。料理の構図や光の取り込み方、湯気や器の質感の表し方まで、写真に“生”を吹き込む技術がずば抜けていたのである。その結果、フォロワーはあっという間に3000人を超えたという。

「不思議なことに3000人を超えたら、急にいろんなお店から声がかかるようになったんですよ」と彼は言った。

 地元の飲食店やカフェから「ぜひ食べに来てください」という招待のダイレクトメールが相次ぐようになったという。金銭は発生せず、投稿の強制もない。ただ「無料でご招待します」という申し出だった。「これで一生ただ飯が食べられるかもしれません」と彼は冗談めかして笑った。

 筆者はつい真顔で応じてしまった。

「あ、実はそれ、ステルスマーケティング(ステマ)に当たる可能性があるんですよ」「お金をもらわなくても、無料提供は経済上の利益と見なされるんです」

 彼は驚いて、「そうなんですか。それじゃあ控えたほうがいいですね」とあっさり答えた。ことさら悪意のない、当たり前に見える行為が、実は法的リスクをはらんでいる。彼はそのことを初めて知ったようだった。