11月に入ると市街地の食べ物の匂いで
さらに強大なクマが奥山から現れる

 まず、クマが市街地に出てくる順序から解説しよう。米田氏によると、9月ごろから体長1メートル程度のクマが出没するが、2歳程度で好奇心が強い一方、クマとしては未熟で、人を襲って死なせようとするケースはあまりないという。この場合、寺社仏閣や公園、広い庭がある住宅に目星を付けるという。

 次に10月になると、若いメスグマが出てくるという。主に親子連れで、建物の中に誤って入ってしまう場合もあるが、被害はそこまで大きくならない傾向がある。

 ところが、秋が深まり10月末に差し掛かると、性別を問わず力を持ったクマが森の奥から現れ始めるという。そうしたクマは森の中にエサがなくなると、農耕地に出て、農作業中の人を襲う可能性が高くなる。

 そして11月に入ると、市街地の街路樹や犬のエサ、飲食店やスーパーなどが放つ食べ物の匂いに誘引され、さらに強大なクマが奥山から現れるそうだ。

 傾向として遅い時期に出てくるクマほど打撃力が強く、人命を脅かす事故につながりやすい。秋が深まり、冬が近づくにつれてクマによる人身被害が増える背景には、このようなクマの特性があるのだ。

 続いて、首都圏でクマが出るかもしれない「要注意エリア」について、米田氏の最新の見解を聞いた。実は米田氏、23年の取材では「神奈川県横浜市の、よこはま動物園ズーラシア周辺」を挙げていた。これは、25年現在も変わらないという。

「このエリアは町田市や多摩市に程近く、鶴見川が付近を流れ、少し離れたところには多摩川や相模川も流れている。『三保市民の森』『新治市民の森』など、保全された深い森も近くにある。森や川を伝って、多摩市や町田市の辺りからクマが移動してきても不思議ではない」というのがその理由だ。

「25年は都内にもクマが頻出。最も目撃情報が多いのは『檜原村方面』で、秋からは南東の『高尾山方面』にシフトしてきているのが見逃せない」と米田氏は指摘。「さらに首都圏の中心部へクマが出ていくとなると、『神奈川県丹沢方面』から、東京の西部へつながる『多摩丘陵』がそのルートになる」と推測する。