「待っているお客さん」を見かけたとき、無愛想な人は「自分の客じゃないから」と思って無視する。感じのいい人は何をする?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さん。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
Photo: Adobe Stock
まるで「透明人間」のような扱い
ある美容系サロンに行ったときのことです。
そのお店を利用するのは、初めてでした。
受付を済ませ、「おかけになってお待ちください」という案内に従い、目の前にある椅子に座りました。
すぐ呼ばれると思ったので、スマホも本もバッグから取りださずにいました。
次々に、私の目の前をスタッフさんが横切ります。
予約時間を過ぎたのになかなか声をかけられないなか、中には受付に立ち止まり他スタッフさんと、ランチのシフトについて話し込む人もいました。
7~8分くらいのことでしたが、その間私は誰とも目は合わず、声もかけられず、担当者が現れるまで、透明人間のように扱われていました。
「存在」を認められている実感
後日、また別用で他のサロンに行くことがありました。
受付を済ませ、椅子に座って案内を持っていると、私の前をスタッフさんが通るたびに、私に笑顔で会釈をしてくれたり、こんにちは、と声をかけてくれたりしました。
同じく数分待ちましたが、受付スタッフさんから、
「お待たせして申し訳ありません。間もなくご案内いたします」
という途中の声がけもありました。
このお店では、私は確かに「存在」を認められている実感がありました。
その後現れた私の担当者にも、気持ちよく席に案内してもらいました。
少なくとも1時間は過ごす場所です。
もし技術も費用も同じくらいだとしたら、あなたはどちらのサロンに通いたいでしょうか?
「存在を認めてほしい」という欲求
私が訪問した最初のサロンでも、おそらく日々技術を磨き、目の前のお客様への対応についても指導を受けている方たちだと思います。
でも、お客様側からすると、「これからも利用したい」「したくない」を決めるのは、思いもよらない、こんな場面にあるのかもしれません。
「マズローの欲求5段階説」をご存じの方は多いと思います。
その中の「承認欲求」は、接客場面でも活用できます。
丁寧・カジュアルなど、サービスの濃淡は人によって好みが分かれるものの、私たちには「存在を認めてもらいたい」という基本の欲求があります。
ビジネスシーンに置き換えると…
それをビジネスシーンに置き換えてみましょう。
・ 訪問先の廊下を歩いていても、誰も目を合わせてくれない
・ オフィス内を案内されても、担当者以外からは完全無視される
「お客様=自分が担当しているお客様」という考えの持ち主ばかりだと、こうした寒々しい組織になりがちです。
態度はノンバーバルのメッセージ。
言葉はなくても、「私はあなたに関心がありません」を伝えているようなものです。
また、自分の担当者は感じがいい。でも他の人はそうでもない。
とすると、担当者が異動したり辞めたりしたら、そこでお客様との縁が切れてしまいますよね。
今度、あなたの会社で見知らぬお客様と会ったら、少しだけ勇気を出してみてください。
・笑顔で会釈する
・「こんにちは」「いらっしゃいませ」と声をかける
たった、これだけです。
相手の「これからもこのお店、会社にお願いしたい」という目盛りを一つ上げることにつながることでしょう。
必ず誰かが見ている
本来は、こうしたお客様への向き合い方は、トップのサービス哲学や組織の風土、教育でスタートすることだと思います。
ただ、あなたがその立ち位置にいないとしても、あなたの行動は、必ず誰かが見ています。
お客様だけでなく、同僚や上司の目の中に、その姿が入ってきます。
その積み重ねが「あなた個人の信頼」を確実に上げ、同時に会社の印象もあげていきます。
(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が書き下ろしたものです。)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。著書に4万部を突破した『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)がある。





