日米半導体摩擦から
導かれる2つの教訓
トランプ政権が再来した今、米国に各国がどう対応するかを考える時、半導体問題で日本の得た教訓は貴重だ。
それは、米国との関係がどれだけ重要であっても、あるいは米国との関係が重要であるならなおさら、たとえ自国の経済が上り調子でも、米国との対立を解消しようと数値目標に言及してはならないというものだ。
米国は数値目標が実現しなければ不信を強め、実現すれば手応えを得て、いずれにせよますます数値目標にこだわるようになる。
逆に相手国はそんな米国に辟易して、数値目標を拒むようになる。
米国との関係を壊してはならないとの思いで言及した数値目標は、その場しのぎにしかならず、米国との関係をより悪化させることになる。
もう1つの教訓は、人々の「知る権利」に奉仕するジャーナリストとして考えたものだ。
2国間の懸案について、両政府を代表する立場の者どうしで「文書」にしてまで確認したものを隠すべきではないということだ。サイドレターはまさにそうした文書にあたる。
『極秘文書が明かす戦後日本外交 歴代首相の政治決断に迫る』(藤田直央、朝日新聞出版)
サイドレターの存在が伏せられたことで、両政府が解決へのアプローチを共有できない深刻さを認識できずに対処が遅れたことの重さを、大矢根(編集部注/大矢根聡。政治学者、同志社大学教授)はこう指摘した。
「半導体問題をもっと早く解決できていれば、日本はバブル景気崩壊前の経済大国であるうちに、冷戦終焉で経済のグローバル化が進む世界にどう適応し、運営するかについて、大きなビジョンを打ち出せたかもしれない。だが実際は半導体問題が長引いて、数値目標をめぐる米国との摩擦が他の分野にも広がり、一時しのぎを続けるうちに機会を逸した」
外務省は今も、半導体問題でのサイドレターは政府間合意ではなく、ゆえに伏せたことに問題はなかったという立場を変えていない。今回の公開は、あくまで作成から30年たった文書は原則公開という内規をふまえたものだという説明だ。
先に述べた2つの教訓が日本政府内で理解されているのか、甚だ心もとない。







