4月13日昼、米メリーランド州の大統領専用の山荘キャンプ・デービッド。議事録によると、レーガンは「自分は保護主義反対の姿勢を和らげることはしないが、500億ドルの対日赤字の中で、上下両院でますます保護主義的な傾向が強まり、そうした傾向への世論の支持が高まりつつある」と述べ、半導体にも言及した。

 中曽根は同意する。

《「自分は日本の黒字継続を憂慮している。自民党に対し、500億ドルの赤字が続くようでは日本は生きのびることはできないと言っている。日本は第二のカルタゴとなる危険がある。自らが改革を行ってゆく必要がある」》

 カルタゴとは紀元前に地中海貿易で発展したが、ローマと戦って亡びた北アフリカの国だ。

 自民党では小派閥の領袖である中曽根は、ソ連と対峙する冷戦下で日米は貿易戦争を避けるべきとし、そのための国内の「改革」を主導することで指導力を保とうとしていた。

「貿易問題のため自由世界の団結が阻害されることがあってはならない」とし、「(日本は)輸出指向型の構造から輸入指向型の構造に変えて輸出入のバランスを取る」と述べた。

 その上で、「大統領の保護主義に対する強い反対を評価する。大統領の決定に援軍を送るようにしたい」と述べ、半導体など「大統領の言及された具体的品目については、責任者同士で話をさせたい」と語った。

報復措置だけは避けようと
決死の調整を続ける

 だが、その責任者同士の協議は難航。外務省の「日米半導体協議」ファイルに綴られた文書は、その確執と迷走を網羅している。

 日米首脳会談翌月の1986年5月19日、通商担当次官級協議がワシントンで開かれた。米政府の「報復措置」を避けるための日米半導体協定を作るにあたり、米国系半導体の日本への輸出をどう増やすかの書きぶりが焦点となった。

《通商産業審議官・若杉和夫:(日本半導体メーカーの)主要11社以外にも5年先の米系半導体のシェア(市場占有率)の数字を出すよう説得している。
USTR次席代表・スミス:米側業界は日本市場でのシェアがteen(13~19%)では納得しない。》