それでも、胡さんは「日本に来て良かった」と実感している。「たまたま周囲の住民からは冷たくされているが、そうでない優しい日本人も多いことも体験しているから」(胡さん)
「我々中国人が日本に歓迎されていないことは分かっている。それでも日本は健全な社会であり、いい面がたくさんある。日本には助け合いの精神があり、基本的人権も尊重されている。時には差別されても、日本は法治国家だから、何かあるときには法律が守ってくれる。だから、日本で頑張って生きていきたい」
肝心の子育ての面では、うれしいこともたくさんあるようだ。この点が胡さんの心を満たしている。
「娘が通っている保育園の先生たちがとても優しい。妻は片言の日本語しか話せないが、いつもゆっくり話したり、筆談したりしてくれる。何よりも、まだ2歳の娘がすでに『あいさつをきちんとすること。ごはんは残さずに最後の一粒まで食べること』というような、大切な教育を受けている。道徳面や子どもの教育を見たら、日本に来て正解だと思っている」と胡さんは最後に語った。
自国を離れて異国の地で生きるのは、
中国人も日本人も等しく大変
同じ頃に中国を出て日本にやってきた2組の家族だが、状況はずいぶん異なる。大阪在住の劉さん家族は、日本に来て大満足、非常に幸せな状況。東京在住の胡さん家族は、住民には冷遇されてはいるが、それなりに日本という国を信頼し、期待して頑張っているという状況だ。
彼らが日本に来たのは、コロナ禍の中国社会の問題が背景にあり、子どもの将来に不安を感じたからだ。自国を離れ、異国の地で生きるのは何にせよ大変なことだ。一生懸命生きようとしている人は、国籍関係なく尊重されるべきだと思った。これは日本に来た外国人に限らず、日本から海外へ渡った人も同じだろう。
すでに日本には、中国人だけでなくさまざまな国から来た人がたくさん暮らしている。どこの国から来た人でも、その人に合った生き方や、現地の人々と協力し合って暮らしていくことが可能な社会を実現させることが、これからは大事になるのではないだろうか。







