現代人のストレスにはスマホが大きくかかわっている。スマホに触らなければストレスは減るというのはよく言われることだ。一方で、スマホは日常に欠かせない便利ツールであるのも事実。そこで、『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(ジェニファー・L・タイツ著、久山葉子訳)を紹介したい。本書では、ストレスを抱えやすい人のために、スマホを活用したストレスリセット法を含めた「科学的に実証された不安・不満を解消する方法」を多数紹介している。「シンプルなのに効果抜群」「ストレスが尋常じゃなかったので助かった」「すぐに使える方法がたくさん載っている」など絶賛レビューが多数寄せられている。本記事では、スマホを活用しながらストレスをリセットする方法について本書を引用しながら紹介する。(構成/小川晶子)
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スマホをいじるのをやめれば当然ストレスは減るが…
現代人にとって、なくてはならない存在であるスマホ。
移動中にメールやSNS、ネットニュースをチェックできるし、道に迷ってもGoogleマップがあれば何とかなる。最近は支払いもスマホだ。
だが、便利さと同時にストレスがついてまわるのも確かなようである。
米国アリゾナ大学の研究(2019年)では、スマホへの依存度が高い人はうつ症状や孤独感を抱える傾向があることが示されている。
また、ドイツのルール大学がさまざまな専門分野の職場の従業員を対象にした調査(2024年)では、スマホ等を操作しているスクリーンタイムを1日1時間減らすだけで、ストレスが減ってメンタルヘルスに良い効果があらわれ、仕事の満足度と意欲がアップしたという。
頻繁にスマホをいじるのをやめれば、ストレスは減る――。
さまざまな調査が示しているとおり、多くの人が実感していることではあるだろう。
しかし、ストレスが溜まっているときほど、スマホをいじりたくなってしまうのもまた事実ではないだろうか。
「触るな」と言われるほど触りたくなってしまうのである。
スマホを使ってストレスリセット!
ストレスや不快な症状を瞬時にリセットするテクニックを75個紹介している本『瞬間ストレスリセット』では、スマホを必ずしも悪者にしていない。
「スマホを家に置いて散歩する」「メールを見ない時間をつくる」「SNSから離れる」といったストレスリセット法も紹介されているが、スマホ(デジタルデバイス)をうまく活用したストレスリセット法もある。
生活の一部となっているスマホをやめることは難しいのだから、つい見てしまうことに罪悪感を持ち続けるより、うまく活用することを考えてもいいだろう。
本書の中で、私自身が活用して大変役に立ったストレスリセット法は、スマホを活用して「自分の気持ちが上がる『ご機嫌キット』をつくる」というものだ。
気持ちが上がる「お気に入り」をまとめておく
元気の出る写真、インスピレーションになる名言、感動的な曲のプレイリスト、気持ちのこもったカードやメッセージなどの思い出の品だろうか。
ではさっそく集めてみよう。
――『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(p.216)
お気に入りを集めた「ご機嫌キット」があれば、モヤモヤして気持ちが晴れないとき、イライラしているときなどに眺めるだけで気分を変えることができる。
「ご機嫌キット」をつくること自体が気分を上げてくれるというオマケつきだ。
もちろんノートに写真を貼るなどして「ご機嫌キット」を作ってもいいわけだが、やはり便利なのはスマホである。常に携帯しているから、気分が落ちたときにパッと見ることができて良い。
さらに、本書ではアプリを紹介している。
――『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(p.217)
このアプリは写真や動画、テキスト等を追加して自分用の「ご機嫌キット」にできるほか、瞑想のガイドがついていたりする。
アメリカの心理学者による調査では、メンタルヘルスの治療を受けている退役軍人がこのアプリを利用すると、不快な感情や考えに対処する能力が大幅に向上したということだ。
AIにグチを聞いてもらう
ただ、海外のアプリですべて英語であるため、使いにくい人も多いかもしれない。
ご機嫌キットからは少し離れてしまうが、日本のストレスケアアプリで私が使っているのは「Awarefy(アウェアファイ)」というものだ。
このアプリは、気分や体調の記録ができたり、瞑想ガイドがあったりするほかAIパートナーとチャットができるようになっている。
モヤモヤしたとき、イラッとしたとき、友だちにグチを言うような感じでAIにチャットを送れば、「そう思ったんですね」と共感コメントをひたすら返してくれる。
これだけで何となくスッキリするし、何より衝動的な反応による状況の悪化を防ぐことができるのが大きい。
本書の著者で臨床心理学者のジェニファー・L・タイツ氏は「衝動的に反応しないようにするだけでも、状況を劇的に改善できる」と言っている。
人は感情的になると分別がつかなくなり、身動きがとれなくなるような行動に出てしまいがちになるのだ。
つらくなるほど何かに執着したり、攻撃的なメッセージを送りつけたり、やらなければいけないことを先延ばしにしたり、薬物を乱用したり――こんなふうに本能は私たちに逆らい、苦しみを悪化させる。
――『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(p.3)
いやなことがあったときに衝動的にSNSに投稿したりすれば、それが誤解されて広まったり、ひどいコメントがついたりして苦しみは大きくなってしまう。
感情に名前をつけてメモ
また、「こんなことがあってムカついている」「悲しくて落ち込んでいる」など自分の感情を書き出すことは「感情ラベリング」と呼ばれるテクニックにあたる。
――『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(p.149)
ネガティブな感情に支配されたとき、スマホのメモ帳に書いていくだけでもストレスがリセットされる。
本書を参考にしつつ、スマホをうまく使ったストレスリセット法を取り入れてみてはいかがだろうか。
(本稿は『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』に関する書き下ろし特別投稿です)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。









