Photo:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages
東京ディズニーリゾートに57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした“夢の国”の「ありのまま」をお伝えしよう。楽しいこと、ハッピーなことばかりの仕事などない。それはほかのすべての仕事と同様、ディズニーキャストだってそうなのである。※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ、2022年2月1日発行)の一部を抜粋・編集したものです
某月某日 何をしているんですか?
ゲストからの質問
晴れてキャストデビューを果たして2日目のことだった。オンステージでスイーピング*をしていると、女子高校生とおぼしき2人組のゲストが私に近寄ってきた。
「何をしているんですか?」
「......?」
掃除をしていることは見たらわかるだろうと思ったが、質問の意図がわからないまま、とりあえずこう答えた。
「ゴミを集めているんですよ。ポップコーン*なんかがあちこちに落ちていますからね」
それを聞いた彼女たちは怪訝そうに顔を見合わせると、そのまま無言で立ち去っていった。
それからしばらくして、今度は小学生の女の子を連れたお母さんから尋ねられた。
「何を集めているんですか?」
「ええ、ポップコーンなどが落ちていますから……」
「……あぁ、そうなんですか。すみません」
なぜだか今度は親子でがっかりされてしまったようだった。さすがにこれは変だと思い、休憩時間に同僚キャストの谷口さんに尋ねてみた。
「今日、スイーピング中にゲストから何度か『何をしているんですか?』と聞かれたのですが、あれはなんでしょうか?」







