介護や相続の段階で家族の関係が壊れてしまうことも写真はイメージです Photo:PIXTA

「親と資産の話はしにくい」と避けていないだろうか。しかし、先送りにすると、いざ介護や相続の段階で家族の関係が壊れてしまうことも。30年にわたり介護現場を見てきた吉田肇氏は、親子でお金を話し合うには“正直さ”と“段階的な工夫”が欠かせないと語る。※本稿は、吉田肇『介護・老後で困る前に読む本 親子で備える知恵と早期の選択で未来を変える!』(NHK出版)の一部を抜粋・編集したものです。

両親より自分が先に逝く
その場合を想定して話す

 資産に関することは、親子であってもざっくばらんに話しにくいものです。円滑に話を進めるには、親御さんのことばかり聞くのではなく、お子さんの資産状況も正直に親に伝えるように心がけましょう。「親父やおふくろよりも自分が先に逝くかもしれない。自分にもしものことがあった場合、妻や子どもたちが困らないようにしたい。どうしたらいいかな?」などと相談してみるのも一案でしょう。長寿化は、裏を返せば親より子どものほうが先に亡くなる可能性もはらみますから、現実的な相談とも言えます。

「自分は今58歳で、2年後に退職金が1500万円くらい入ると思う。その中から家のローンの完済に500万円使うつもりなので、預貯金と合わせて手元に1000万円ほど残る」などと正直に明かしたうえで、「親父かおふくろが将来介護施設に入居せざるを得なくなった場合、援助できなくはないが、自分の家計から持ち出せるのは月に7万円まで」と伝える備え方もあります。

 そうやって慎重に、かつ具体的に話を進めていきながら、家財整理や相続といったデリケートな話題についても親子で早めに話し合う機会を見つけていきましょう。