介護にかかるお金などについて、子の兄弟姉妹間で情報共有しておくことも重要です。何年にもわたって献身的に介護にあたった子どもと、あまり介護にかかわらなかった子どもがあとになって対立して裁判沙汰になるのを避けるためです。

兄弟姉妹が作る交換日記
オープンな「介護ノート」

 兄弟姉妹の関係がうまくいっているご家族は、とてもオープンに話題を共有しています。交換日記のような「介護ノート」をつくっているご家族もいます。実家の電話台など、家族全員がわかる場所にノートを置いておき、親御さんを訪ねた人はその日付、使ったお金(自宅から実家までの往復交通費、持参した弁当代や食事の材料費、日用品の補充代、オムツ代など)をノートに書き込み、レシートを貼っておきます。

 こうした記録は、その後に特別寄与料(編集部注/被相続人の介護やその他の貢献によって財産を維持、増加させた相続人以外の親族がその貢献に応じて金銭を請求できる制度)の請求が発生した場合の証拠書類にもなります。介護度が重い場合は、食欲、運動量、排せつの回数、入浴状況、話した内容などもあわせて記しておきましょう。

 親御さんが体力は衰えているものの認知機能に問題はないのであれば、年金や預貯金の中からそのつど精算することも可能でしょう。「家族間でいちいち精算なんて世知辛い」と思われるかもしれませんが、子どもの家族の中にお金にシビアな人がいたりすると、「あなたが実家に帰るとなんだかんだ親のためにお金を使ってしまう。ほかの兄弟姉妹もそんなにしょっちゅう帰って親のためにお金を使っているの?」などと指摘され、実家に帰りづらくなってしまう……なんてこともあり得ますし、実際にそうしたケースをいくつも見てきました。親子間や子どもの兄弟姉妹間のお金のやりとりの明確化は、お金にシビアな家族の説得材料としても有効なのです。

 私の知人のご家族は、お子さん世代の3兄弟が配偶者も含めた6人でメッセンジャーアプリのグループを作成し、介護施設に入居している100歳になるお母さまを訪ねた人が「今日はこんな様子でした」と報告し合っているそうです。レシートなどはスマートフォンで撮影すれば画像をシェアできますし、手書きのノートの代わりにこうしたデジタルアプリを活用することも便利な方法だと思います。