「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

父親Photo: Adobe Stock

ちょっとした言葉で親子の関係は変わる

「冷蔵庫のもの、消費期限が切れているものばかりだよ。しっかりしてよ」。この消費期限忘れは私もよくやってしまいます。冷蔵庫の奥底に眠ったまま、買ったことすら忘れてしまうことがしょっちゅうです。それは親も同じですから、まずは「誰でも忘れることはある」と、おおらかな気持ちで受け止めましょう。

 指摘をして直るならば、誰も苦労をしません。「人間ならば誰だってミスをする」という前提に気づくことが大切です。相手の立場に立てるようになると包み込むような言葉が自然と出てくるようになります。しかもその相手が歳をとった親ならばなおさらです。

 こういった場合は、「親も子も同じ人間」だというメッセージを送りましょう。たとえば、「私もよく消費期限、切らしちゃうんだ」など、人間味あふれる言葉がかけられるとベストです。やわらかな心で失敗を受けとめる言葉があれば、親も失敗で落ち込みません。

 むしろ「子どもも失敗するんだ」と安心するでしょう。「老い」とはすなわち「喪失」です。親は、できないことが増えていく「喪失体験」を、毎日味わっています。

 だからこそ、温かい声かけを心がけたいですね。それが認知症の進行を遅らせたり、うつ病の発症リスクを減らしたりするなど、健康寿命を伸ばすきっかけの1つになります。