資産の話を切り出す肝は
タイミングと人選にあり
親の資産把握においてキャッシュについていきなり聞くのは高いハードルです。その場合、実家の不動産の話題から「将来的にどうしたい?」などと聞いていくのが得策ですが、「万一のときに備えて金融機関の口座情報を家族で共有しない?」など、踏み込んだ話をする場合は「いつ切り出すか」がひとつのポイントになります。
タイミングとしては、親が病気になって健康面の不安が生じたとき、一次相続などで相続登記の名義変更が必要になったとき、親子で相談しながら未来ノートを書き込むときなどが適しています。
『介護・老後で困る前に読む本 親子で備える知恵と早期の選択で未来を変える!』(吉田肇、NHK出版)
また、いつ切り出すかと同じくらい、「誰が切り出すか」もポイントです。お子さんが複数いる場合は、子どもたちの間で誰が切り出すかを事前に話し合っておきましょう。私が30余年介護の現場で見聞きした限りでは、お金に対する欲や執着がいちばん少ないお子さんが切り出すとスムーズに話が進む印象があります。親も「この子が言うなら」という気持ちになるのでしょう。
いざ介護、いざ家財整理、いざ相続となったときに、それまでとても仲がよかった家族が揉め、お子さん世代が兄弟姉妹間で争うケースをたくさん見てきました。ましてや日頃から関係がうまくいっていない家族の場合、推して知るべしです。関係性がよくない家族は十中八九揉めることになるので、懸念のあるお子さんは「絶対にあとで揉めるから、将来の諸々についてどうしたいのか、早めに決めて私たちに伝えて!」と、親御さんにストレートにお願いするのもひとつの手でしょう。
繰り返しますが、老後や介護にまつわる選択と備えには相応の時間を要します。コミュニケーションひとつとっても段階的に進めていく配慮が必要です。だからこそ、「親子で早めに!」が不可欠なのです。







