写真はイメージです Photo:PIXTA
映画やドラマの宣伝でよく目にする「全米が泣いた」「感動の実話」。いまや「泣ける」という言葉は食傷気味に思える。それでも、なぜこんなにも街中にあふれているのか。心理学の教授が教える、「泣ける」マーケティングのすごい力とは?※本稿は、石津智大『泣ける消費 人はモノではなく「感情」を買っている』(サンマーク出版)の一部を抜粋・編集したものです。
「泣ける」映画や本を
こぞって求める消費者たち
人が悲しい物語に惹かれるのは、「喪失」の影に心が反応するから。
でも、それだけでは説明しきれない行動があります。
人は「悲しみ」に惹かれるだけなら、流れてきた映像や物語に、ふと目を留めるくらいで済むはずです。
しかしわたしたちは「進んでそれを体験しにいく」のです。
映画館で泣ける映画を観る。書店で感動的な小説を探す。SNSで「泣ける話まとめ」を保存し、あとで読む。
いったい、なぜわたしたちは「泣ける体験」に価値を感じ、進んでそれを求めるのでしょうか?
まるで、食べ物を買うように。服を選ぶように。人は「感情」を、意思を持って「買っている」のです。
「気になる」だけでは説明しきれない、その先の「消費する」という行為。
実は、「感情の動き」こそが、映画や本だけでなく、商品やサービスの価値そのものにもなっているのです。
ここからは、「泣いたあとにすっきりする」という感覚を入り口に、人がなぜ感情の動きを求め、消費するのかを紐解いていきます。
悲しい物語を見ると
気持ちが少し楽になる理由
「泣いて、すっきりする」
この不思議な現象には、実は古くから名前がついています。それが「カタルシス(浄化)」という概念です。







