
過去にも朝ドラで「妾」が描かれていた
沢口靖子がヒロインを演じた『澪つくし』(1985年 脚本:ジェームス三木)はヒロインが妾の子であった。また、『あさが来た』(2015年度後期 脚本:大森美香)ではヒロインに子どもがなかなかできないため、妾をとることになるというエピソードが描かれた。
拙著『みんなの朝ドラ』では『あさが来た』の妾描写を取り上げ論じている。実業家・広岡浅子をモデルにしたドラマで、史実では、浅子の夫は妾を持っていたが、ドラマでは妾を持たない。周囲から妾を勧められるが断るし、ヒロインも一度は家存続のために妾をもつことを認めるも、やはり持たないでほしいと哀願する。
 明治時代に当たり前にあった妾制度を、現代の価値観で書き換えているが、当時、当たり前だったことを当たり前ではなく苦しんだ人もいたであろうという観点は多くの視聴者に支持された。
 また、三味線など特技を生かし、男性に養ってもらわなくても、自立できる女性の姿を描いたことも評価が高かった。
 1871年(明治4年)の戸籍法では「妻妾二親等」とされ、妾は合法であり、正妻と同じくらいの権利を持っていた。それが変わったのは1882年(明治15年)。刑法が改正され、妾制度がなくなった。いま『ばけばけ』が描いている時代は1890年(明治23年)なので、妾はすでに合法ではなくなっている。だからこそたちが悪いともいえるだろう。妾がたちが悪いのではなく、世の中の考えかたが変わったことが、である。
 かつては制度で守られていたものが、守られなくなったのだから。
知事が言葉を濁す意味もわかる。妾が合法ではないが、妾を持つ慣習は消滅していない。こっそり妾(愛人)を持ち続けている男性がいるのは、100年以上たって、令和の時代になっても変わらない。
ただし、妾を持つ側の考え方の違いもあって、妾にもきちんと責任を持つ、いわゆる男の甲斐性のある人物もいて。『澪つくし』のヒロインの父はまさに甲斐性のある人物として描かれていた。
さて、ヘブンが女中を持った場合、どうなるだろうか。







