『ばけばけ』第27回より 写真提供:NHK
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第27回(2025年11月4日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
「どっちもできる女中」とは何か?
 ヘブン(トミー・バストウ)が花田旅館の平太(生瀬勝久)と揉めて旅館を出て、家を借りることになった。
 異国から来て男性ひとり暮らしでは不自由である。世話をしてくれる人が欲しいと錦織(吉沢亮)に頼む。錦織から報告を受けた知事(佐野史郎)は、世話をしてくれる人といえば女中と考え、「どっちもできる女中がいいわね」とひとりごちる。
「どっちもといいますと」と錦織は尋ねるが、はっきりと言語化されない。
 錦織はまっすぐ知事に注がれた目をつむる。しばらくして目を開けると、逡巡(しゅんじゅん)するように少し横に動かしてためいき。そのときのどが少し動く。『国宝』級の吉沢亮の心情表現をたっぷり映す。
「どっちもできる女中」候補は遊女・なみ(さとうほなみ)である。当初から洋妾になろうとしていたからだ。つまり、「どっちもできる女中」とは妾(めかけ)であることがはっきり言語化しなくとも漂う。
 ヘブンは花田旅館の女中・ウメ(野内まる)を希望したが、断られてしまったので、なみにお鉢が回ってきたのだ。ウメが断ったのは、花田家への忠誠もあるだろうけれど、女中=妾だと思ったからだろう。
 錦織は遊郭でなみとヘブンを対面させたとき、「夜のことだけでなく昼のこともできないと困る」と言っている。昼のこととは家事全般――いわゆる女中の仕事だ。
なみは洋妾になりたい。それは給金がいいからだ。でもそんななみも少し躊躇していた。洋妾はつらい思いをすると聞いていたからだ。人間じゃないと思われて、ひどい目にあって、それに耐えられず身を売る人もいるのだと。
この時代、「妾」というよりは「洋妾」がつらい仕事だと思われていたようだ。







