
女中をやれば年収1000万円超え?
制作統括の橋爪國臣チーフプロデューサーによると、当時の貨幣価値、1円がおよそ3万円から4万円、20円だと月70万円、年収だと1000万円近いということだ。すごいぞ「どっちもできる女中」。
ヘブンの月給が100円だから、月350万円!? そのうちの2割を女中に払ってくれるとはなかなか豪気ではないだろうか。
拙著『みんなの朝ドラ』の『あさが来た』(2015年度後期)における妾(めかけ)描写に関する項目で、筆者は平野啓一郎の戯曲『肉声 妾語り』を例にあげ、妾の暮らしの優雅さを紹介した。時代は昭和、戦時中。主人公はプールとフェンシング場のあるル・コルビュジエの建築を思わせる邸宅に住んで豊かな生活を送っているのだ。
また、江戸時代の妾は法的に認められていて、家も与えられ、お手当も潤沢であったため、女性の人生の選択肢でもあり、決して恥じるべきものではなかったことも、読んだ数々の資料によって知ることができた。
つまり、トキたちが警戒しているのは、外国人の妾であることに対してなのだろうと考えられる。
その偏見は、もしかしたら、ヘブンが百姓の娘ではなく武家の娘を求めていることにも通じるかもしれない。ものごとの優劣は人それぞれ違うのである。
『みんなの朝ドラ』は妾について問題提起した『あさが来た』をはじめとして、国際結婚による異文化コミュニケーションを描いた『マッサン』(2014年度後期)についても取り上げている。NHK大阪局(通称BK)が描いてきた妾や異文化婚について、『ばけばけ』では新たな視点で新しいドラマを作りあげているといえるだろう。『ばけばけ』を見るうえで『みんなの朝ドラ』もぜひ参考にしていただきたい。
貧しさにつけこまれたような気がしていら立ち、その晩、トキは眠れない。久しぶりにフミ(池脇千鶴)に怪談がたりをせがんだ。
朝早く、丑三つ時から働いておつかれのはずだが、トキの頼みを聞いてくれるやさしいフミ。
ちなみに丑三つ時は午前2時から2時半。朝どころじゃない。
翌朝、花田旅館にしじみを売りに来たとき、トキとフミは眠そうで、ツル(池谷のぶえ)に「(怪談は)子守唄みたいなもんで」と言っていると、ヘブンが起きてくる。トキはなんだか気まずい気持ちになる。







