何度でも原理原則に立ち返って

瀬戸 当社はM&Aで大きくなったので、グループ会社の社長は私よりも経験豊富な社長が多いのですが、彼らよりも若い僕が信頼を得るには結果を出すこと、そして理念の共有が重要だと最近特に思います。

 新先生は、そんなグループに入りたての社長にも、何度も何度も理念や経営の原理原則を説いてくださいます。

新 将命(あたらし・まさみ)
1936年生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを含むグローバル・エクセレント・カンパニー6社で40年にわたり社長職を3社副社長職を1社経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。長年の経験と実績をベースに、経営者や経営幹部を対象とした経営とリーダーシップに関する講演・セミナーをし、国内外で「リーダー人財開発」の使命に取り組む一方で、経営者・経営者グループに対する経営指導、相談役も果たしている。自身のビジネス人生で得た実質的に役立つ独自の経営論・リーダーシップ論は経営者や次世代リーダーの心を鼓舞させ、講演会には常に多くの聴講者が詰め掛けている。
著書に『経営の教科書』(ダイヤモンド社)『伝説の外資トップが説く リーダーの教科書』(ダイヤモンド社)、『伝説の外資トップが説く 働き方の教科書』(ダイヤモンド社)、『コミュニケーションの教科書』(講談社)など。またオリジナル教材『経営・リーダーシップ実学』やCD教材等も。

新将命 公式サイト

 経営の原理原則は普遍的なものなんですよ。だから良くいえば「ブレない」だし、悪くいえば「変わり映えしない」もの。だからこそ徹底が重要でもあり同時に難しいのです。

瀬戸 日々業務に向き合っていると視野狭窄になりがちです。小さな言い訳をつくりながら、ついつい長期的な投資をないがしろにしてしまう。僕自身も頭ではわかっているつもりでしたが、その重要性を十分に理解していなかったと思います。

 会社が提案する健康の定義や、極端な話ですが自分が何をどうしたいか。生まれたときから考えが定まっている人はいませんから、僕もやりながら見えてきたことがたくさんあります。これだけ根気強く原理原則を説かれると、さすがに気付きますよね。理念のもとに動くようになって、社員みんなが長期的なことに目を向けられるようになったのは大きな成果です。

 私はしつこいくらい言いますからね。理念は何だ、その理念のもとに現場は動いているのか。目標値は明確か、そして目標達成のための戦略はあるのか。戦略は戦術に落とし込まれているのかと。目先の利益にとらわれて短期的に動けば、瞬間的に利益は上がりますが継続は難しい。そんなときこそ立ち止まって、経営の原理原則を思い出してほしいのです。

 我が社の存続のために経営者が示すべきは方向性です。方向性は一次方程式で示すことができますね。すなわち「方向性=理念+目標+戦略」。この方向性を社員に説明し、納得させ、経営に落とし込むことができるのが優れた経営者でありリーダーです。それができない経営者は、単なる管理者でありマネジャーでしかありませんよ。