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遺産を巡るトラブルの原因の一つとして「相続人の伴侶(夫・妻)」があるという。法定相続人ではない伴侶が介入してくる理由とは。実例とともに虎ノ門法律経済事務所の中村賢史郎弁護士にアドバイスしてもらった。(ライター 岩田いく実 監修/虎ノ門法律経済事務所横須賀支店 中村賢史郎弁護士)
遺産総額5000万円以下の
普通の家庭でこそ相続でもめる
遺産をめぐる争い、と耳にすると億を超える高額の遺産をめぐるものと想像する人は多いでしょう。しかし、実際の相続の現場では5000万円以下の遺産をめぐって争うケースのほうが多いのです。
令和6年度の司法統計によると、遺産総額5000万円以下の遺産分割調停は全体の約7割を占めています。つまり「普通の家庭」こそ相続でもめるのです。
なぜ普通の家庭で5000万円以下の遺産をめぐってもめるのか。原因の一つとして「相続人の伴侶(夫・妻)」が介入することによるトラブルがあります。今回紹介するのは、仲の良かった兄弟が兄嫁の一言をきっかけに決裂した実例です。
「そんなにお金が欲しいんですか!」
兄は黙ってうつむくばかり
「お母さんの遺産は、うちがすべていただいて当然です」
亡母の遺産分割協議での長男の和彦(45歳・仮名)の嫁・真理子さん(45歳・仮名)の言葉に、弟・隆司さん(43歳・仮名)は耳を疑いました。すでに父は他界、母の遺産は現金と預貯金を合わせて約3000万円。もともと仲の良かった兄弟でしたが、これをきっかけに相続争いが始まりました。
隆司さんが「せめて気持ち程度はもらえるものと……」と伝えると、真理子さんは沈黙のあと、「そんなにお金が欲しいんですか!」とさらに怒ってしまったと言います。真理子さんの強硬な主張に対して、兄は黙ってうつむくばかり。
真理子さんが怒るのには理由がありました。







