相続トラブルを防ぐために
今からできる4つのこと
(1) 生前に「介護の負担と感謝」を可視化すること
中村弁護士:介護の分担や費用を家族会議などで共有し、金銭的・労務的な貢献をしっかり記録しておくことが大切です。介護に貢献した方、非同居の相続人になる予定の方の双方が相続時にトラブルに巻き込まれないためにも、生前からしっかりと協力関係を作り、介護に関与していない相続人に対しても寄与分について事前に予測させておき、相続に向けて準備をすることが望ましいでしょう。
なかむら・けんしろう/虎ノ門法律経済事務所横須賀支店長 弁護士・税理士・司法書士。大学在学中に司法書士試験に合格。虎ノ門法律経済事務所にて、相続事件のほか、離婚事件・不動産事件・破産事件を主に取り扱う。
(2) 遺言書で明確に意思を残すこと
中村弁護士:被相続人自身が遺言書を残し「誰にどれだけ残すか」をはっきり書いておくことで、遺産分割協議を行わなくてよくなります。生前に介護をしてもらっている方は、介護で頑張ってくれている方のために遺言書を書いて財産を残してあげることも検討するとよいでしょう。
(3) 専門家を早めに交えること
中村弁護士:家族だけで話すと感情的になりがちです。弁護士や税理士など「専門家からのアドバイス」を生前から受けておくことや、話し合いで相続人の伴侶が介入してきた場合に弁護士を介して話し合いをすることで、大切な家族の絆が壊れないように相続対策を進めることができます。
(4) 裁判所に遺産分割調停を申し立てること
中村弁護士:裁判所で行う遺産分割調停では、基本的に相続人しか参加することはできず、相続人の伴侶の介入をある程度減らすことができます。また、中立な調停委員も参加しますので、より円滑に話し合いが進む可能性があります。
「介護の恩」を伝えるために
お金で残す方法を考えよう
今回のケースでは兄嫁が介護を担った功績は、決して小さくありません。しかし、財産をまるごとほしいと主張されると、「えげつない」と感じてしまうことも。
とはいえ、長年の介護には想像以上の時間と労力、そして精神的な負担を伴います。その「恩」をどのような形で伝えるかは、家族それぞれの考え方によって異なります。
もしも「感謝の気持ちをお金で表したい」と思う場合、生前贈与や遺言書の作成といった方法で、明確に意思を残すことが大切です。感情のもつれを避けるためにも、相続人全員が納得できる形での話し合いを行いましょう。
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