『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第36回ではライバル企業への妨害行為について解説する。
「また妨害されるのでは…」消えない懸念
Tシャツ専門店「T-BOX」の2号店の出店計画に反対し、主人公で起業家の花岡拳のもとから離れた元幹部社員・日高功は、一ツ橋商事の高野雅人と街中で偶然出会い、バーで語り合う。
花岡憎しとあらゆる手段で事業を妨害するライバル・井川泰子。その井川の部下で、いやいやながらも妨害の実行役をさせられている高野は、日高に「花岡社長と離れるのはもったいない」と、会社に戻るように諭すのだった。
立場上は競合である高野だが、「サラリーマンの僕から見るとああいう人って憧れなんですよ。大きな相手に臆せず立ち向かっていく人って…」と花岡への思いを漏らす。
一方で花岡は、とある銀行から「翌月の売り上げが20%増加すれば、融資を進める」という約束を取り付ける。そのため、マスコミでの露出を図り、認知を一気に高めようとする。
だが幹部社員らは、「以前と同じように、また井川に妨害されるのではないか」と懸念するのだった。
有名企業のあまりにエゲツないライバル争い
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
結局マスコミへの露出は井川が高野に指示して潰されることになるのだが、井川は、もはや“花岡憎し”の感情だけで動いているような状況だ。
実際にスタートアップの世界でも、10年ほど前に話題になった事例がある。それが配車アプリ最大手のUber(ウーバー)と、競合であるLyft(リフト)の対立だった。
「The Verge」など複数の米メディアによれば、Uber側は「ブランド・アンバサダー」と呼ぶチームを立ち上げ、Lyftをはじめとした競合サービスを利用して運転手をUberに勧誘、配車のキャンセルを繰り返すなどしていたとされる。
Lyftは2013年10月からの8カ月で、5000回以上も配車をキャンセルされたとして、Uber側の妨害工作だと主張していたという(ハーバード・ビジネス・レビュー)。
スタートアップの「市場競争」と言えば聞こえがいいが、フタを開けてみればその実態は、相手のオペレーションを混乱させるためのゲリラ戦とも言えるものだった。
だがその後、Uberは世界各国で規制当局と対立。さらには社内のガバナンス不全が露呈して、創業者のトラヴィス・カラニックはCEOの座を追われてしまう。結局、2019年に両社ともに上場。現在の時価総額でもUberが優位だが、過去を知る人たちは、そのネガティブな側面を忘れることはないだろう。
資金面での悩みが尽きない花岡たち。だが次回、出資者である塚原為ノ介が花岡にあることを気づかせる。
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク







