会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

良い会社かどうかのバロメーターの1つは「離職率」、あともう1つは?Photo: Adobe Stock

「離職率」は良い会社かどうかのバロメーター

 私は、良い会社かどうかを見極めるひとつのバロメーターとして「離職率」を見ています。

 離職率の高い会社は、どんなに利益が出ていても私の基準では、良い会社ではないのです。働く人が幸せではないからです。

 もう一つ、離職率に関連して見ているのは、「辞めた人が戻ってくるか」ということです。

 辞めた人が戻ってくるのは良い会社です。そこには働きがいがあるからです。

 私の親しいお客さまの中には、辞めた人が結構戻ってくる会社があります。そのうちの1社は、辞めて戻ってきた人の息子が、最近その会社に入社しました。もちろん離職率も低く、高収益です。

 いずれにしても、お客さま第一で高収益な会社を作り、それと同時に働く人に働きがいを与えているのが本当の意味での良い会社です。

採用してはいけない人

「良い仕事」に関連して、世の中には人に喜んでもらうことに、それほど関心のない人がいるのも事実です。そのような人を採用したら、経営者がいかに「良い仕事」を通じて、お客さまや従業員を幸せにし、社会に貢献しようと思っていても、目的の追求は難しいのです。

 人に喜んでもらうことに、それほど喜びを感じない人を採用してはいけないのです。

 そのような人は、たとえどんなに優秀でも、結局は自分のことしか考えませんから、「良い仕事」や「お客さま第一」を通じた社会への貢献を目的とする会社には不向きなのです。

 もし、自社にすでにそういう人がいるなら、教育してもそれほど効果はないと思います。

 転職を促すのが無難です。自社にも本人にも、そのほうが間違いなく幸せだからです。

(本稿は[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動の一部を抜粋・編集したものです)

小宮一慶(こみや・かずよし)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。