人生の目標を見失わないための思考法
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、『精神科医Tomyが教える 30代を悩まず生きる言葉』(ダイヤモンド社)など、累計33万部を突破した人気シリーズの原点、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)です。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。

【精神科医が教える】「毎日モヤモヤしっぱなし」…そんなとき、1つだけ自分に問いかけてほしいことPhoto: Adobe Stock

人生の目標を見つける「思考実験」

今日は、「人生の目標を見失わない方法」についてお話ししたいと思います。

精神科医という仕事柄、「死」というテーマは非常に大切です。生きるためには死を考えることが必要ですし、「自殺」や「死にたくなる気持ち」なども、精神科医として真面目に扱わなければならないテーマです。

さて、なぜ冒頭からこのような話をしたかと言いますと、今日のテーマである「人生の目標を見失わない方法」に深く関係しているからです。一言で言えば、人生の目標は、自分が死ぬときのことを考えなければ見つけられないのです。

「今、死ぬとしたら」何を後悔しますか?

例えば、「もうすぐ死にます。今、走馬灯が流れています」という状況を想像してみてください。

その時、もし怨念のように「あぁ、まだ◯◯をやっていないのに…今死ぬわけにはいかない!」という強い気持ちが湧き上がってきたとしたら、その「◯◯」こそがあなたの「まだやり遂げていない、人生の目標」なのだと思います。

ですから、私が今日お伝えしたいのは、「もし今死ぬとしたら、自分は何を思い出すか」ということを、時々考えてみてほしい、ということです(毎日考えると精神的に不安定になる方もいるかもしれませんので、元気な時に試してみるのが良いでしょう)。

そうすることで、自分の本当の目標を見失わずに済みます。

本当の目標と表面的な目標

人によっては、仕事での成功、賞の受賞、ダイエットの達成、あるいは「モテる」ことなどが目標になっているかもしれません。それ自体は大切なことです。

しかし、いざ「今から死にます」という瞬間に、「あぁ、もっと筋トレしてマッチョになりたかった」「あのブランドのバッグが欲しかった」と本気で後悔する人は、あまりいないのではないでしょうか。

日常生活をぼんやりと過ごしていると、そうした表面的なことも、それなりに大事に見えてきます。しかし、それらの優先順位は、本質的には高くない場合が多いのです。

「確信」として心に留めておく

そのことに気づかずに、表面的な目標ばかりを追いかけていると、いざ死ぬという時に「忘れてた…これが一番大事だったのに!」と後悔することになりかねません。

そうならないためにも、自分の本当の目標を「確信」として心に留めておくことが、非常に重要だと私は考えています。

足りないもの、本当に必要なもの

ちなみに、私自身はこの思考トレーニングを続けた結果、今では「やりたかったことは全部達成したな」という心境に至っています。

もちろん、他にもやりたいこと(欲望)はありますが、それらは全て「あってもなくてもいい、あったらラッキー」という「プラスアルファ」のものです。

なぜこの状態になれたかというと、常に「今死んだら後悔はないか」を自問自答して、足りないもの、本当に必要なものを順番に手に入れようとしてきたからです。

私が一番欲しかったもの

私が過去に一番欲しかったもの。それは、かつてパートナーを失って非常に苦しかった経験もあって、「大切な人との穏やかな日常」でした。

うつ病から回復し、仕事も順調になり、ベストセラーの本を出すこともできましたが、それでもまだ「大切な人との日常」だけが欠けていると理解していました。そして今、私はそれを手に入れることができました※もちろん、これが永遠だという保証はありませんが、今欲しかったものは今ここにあります)。

思考トレーニングが教えてくれること

もし、このような思考トレーニングをしていなかったら、どうなっていたでしょうか?

おそらく、「もっと仕事を拡大したい」などと、その意味も深く考えずに目の前の目標を追いかけ、結果として本当に大事だったはずの「パートナーとの心の安らぎ」から遠ざかっていた、ということもあり得たわけです。

人間は、目の前の目標だけを追っていると、自分にとっての本当の優先順位を見失いがちです。ですから、この「自分が死んだらどう思うか」を考える思考トレーニングは非常に大切です。

元気な時に、このトレーニングを

繰り返しになりますが、落ち込んでいる時ではなく、元気な時に、このトレーニングを試してみてください。

そうすれば、自分の本当の目標が何であるか、あるいは「自分は今、後悔なく生きているんだ」という事実に気づけるかもしれません。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。