数々の企業を再建してきたデヴィッド・ノヴァクは、世界の成功者100人から仕事も人生もうまくいくための知見を集め、『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』にまとめている。本記事では、その一部を抜粋・編集し、特に「最高のリーダーがやっていること」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「褒めない上司」が、どんなに優秀でも信頼されないワケPhoto: Adobe Stock

世界のリーダーが知りたがったこと

 ヤム・ブランズは、真面目にやった仕事に対して個々の人に与えられる楽しい賞、星、スマイルマーク、ブーメラン、マグネット、クリスタルのトロフィー、ふざけた歩く歯のおもちゃなどに満ちていた。
 笑顔に拍手、歓声、ハイタッチ、握手、感謝を伝えるカード、壁掛けバナー、賛辞や謝辞などもあふれていた。
 部署の仕事に合わせた賞を考え出すリーダーもいて、タイム誌の表紙もどきを用意して、PR業務に関わった人の顔写真を入れたりもした。

 こんなことをしたのは、うちはひと味違う会社なんだ、働く人の貢献を真に認めて感謝を表す会社なんだということを表現できる、何よりも大事な方法だったからだ。

 他社のリーダーたちがやってきて知りたがったのはそこだった。
 2013年、ジョフ・コルヴァンが「Great job! How Yum Brands Uses Recognition to Build Teams and Get Results」と題した記事をフォーチュン誌に発表し、私たちの取り組みは知られることになった。

 これを機にさらに多くの企業が私たちの事例を知りたい、学びたいと動き出し、認めることの意義は会社の枠を越えて広まっていった。

優先順位を思いだそう

 とはいえ私は、成果を認めることは大切な優先事項なのだと心に刻み直すきっかけを折に触れ必要とした。
 ペースの速い今日のビジネス界では、手を止めて称賛することに時間を費やすのは時に難しいものだ。
 ヤム・ブランズにいたある日、投資家との会議を翌日に控えた私は、CFOでのちに社長となるリック・カルッチと一緒にプレゼン資料の準備に勤しんでいた。

 すると突然、社内の祝福音楽隊(有志が楽器を持ちより、仲間の成果を高らかにうたう)が演奏しながら廊下をこちらに向かって歩いてくるのが聞こえてきた。社員の貢献を称えるためだ。
 リックは立ち上がった。私は座ったまま言った。

「このプレゼンを終わらせないと」
「デヴィッド、君にとって、今はみんなの前に出ることこそが大事なんじゃないのか。ここに隠れたまま出ていかなかったら、みんなにどんなメッセージが伝わることになる?」

 私は立ち上がり、2人で部屋の外に出た。
 拍手と歓声、顔を紅潮させて笑みを浮かべ祝福される顔を見つめ、すぐに思い出した。
 これこそが、何をおいても私が真っ先にいるべき場所なのだ。
 この先、今日の主役であるこの人がどんな素晴らしいアイデアを考えつき、みんなと分かち合ってくれるかに比べれば、今ここで15分仕事を抜けるくらい何だというのだろう。

「承認」されることで人は変わる

 CEOを退任して6年後の2022年、ヤム・ブランズの創立25周年を祝う会に出席すると大勢の人がやってきて、一緒に仕事をした頃のかけがえのない体験を口々に語ってくれた。
 誰もが口にしたのが認めることの持つ力だ。そしてそのことによって、他ならぬ私自身が認めてもらえた。
 単にいい気分になれただけでなく、認めて称える行動が今も企業文化の中心にあるのだと自信を持てたのだ。

 あまねく広がるその影響が、ヤム・ブランズで働く人々と引き続き共にあることを私は知っている。
 認められ称えられた人にこれまでどんな違いをもたらし、今も違いを生み続けていることを知っている。
 それがどんな行動を引き出すかを知っている。

(この記事は『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』をもとに、一部抜粋・編集して作成しました。)