「形から入る」をバカにする人が一生気づかない…憧れを推進力に変える技術
101歳、現役の化粧品販売員として活躍している堀野智子(トモコ)さん。累計売上高は約1億3000万円で、「最高齢のビューティーアドバイザー」としてギネス世界記録に認定されたキャリア61年のトモコさんが、年をとるほど働くのが楽しくなる50の知恵を初公開した話題の書『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものをお送りする。佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)が「堀野氏の技法は、ヒュミント(人間による情報収集活動)にも応用できる」と絶賛(日刊ゲンダイ・週末オススメ本ミシュラン)する世界一の先輩による“人生訓”は、アナタの疲れた心も元気にしてくれる!
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憧れを「かたち」にする一歩
人の内面は、必ず外側に出るものだと思います。その意味で、宝塚の団員さんたちは、私にとって憧れの女性だったのです。
顔かたちの美しさは持って生まれたものなので、追いつくのは難しいけれども、キリッと凛々しい佇まいとか、身のこなしの美しさ、服装などは、その気になれば誰でも真似することができます。
そこで、憧れの存在だった宝塚の団員さんたちの真似が少しでもできるのならばと、女学校を卒業して、女性が袴姿で通勤している職場を選んだのです。
袴姿に込めた、あの頃の想い
ちなみに、袴姿での通勤が義務付けられていたわけではありませんし、制服だったわけでもありません。
それでも袴姿が多かったということは、私だけでなく少なからず働く女性の心の中に「キリッと凛々しくしていたい」「颯爽としていたい」という思いがあったのかもしれませんね。
九十年前の記憶と、「美」への目覚め
もう今から90年近く前のことなのに、初めて袴姿で通勤したときの晴れがましく、ちょっぴり誇らしい気持ちは、今でも鮮やかによみがえってきます。
のちに私は、ポーラ化粧品の化粧品販売員(セールスレディ)になったわけですが、「美」に関する仕事をするようになったきっかけが、ここにあったのかもしれないと思うようになりました。
【解説】ビジネスパーソンへの示唆
憧れを「推進力」に変える技術
著者・トモコさんの体験は、単なる過去の美しい思い出にとどまりません。ここには、現代のビジネスパーソンが自身のキャリアを切り拓き、プロフェッショナルとして成長するための普遍的なヒントが詰まっています。
1.「形」から入るセルフマネジメント術
トモコさんは「キリッと凛々しくしていたい」という内面的な願望を、「袴姿」という具体的な「かたち」に求めました。これは、制服や義務ではなかったにもかかわらず、自ら選んだ行動です。
ビジネスにおいても、服装や身だしなみ、姿勢、言葉遣いといった「形」は、単に他者へ与える印象を左右するだけではありません。「自分はこういうプロフェッショナルである」という理想の姿を「形」として先に整えることは、自身の内面やマインドセット(心構え)を、その理想へと引き上げる強力なセルフマネジメント術となります。
背筋を伸ばすだけで、思考がクリアになるように、「形」は内面を育てるのです。
2.「憧れ」を具体的な行動に翻訳する力
憧れを抱くだけで終わらせず、「真似る」ことから始め、それが可能な「職場を選ぶ」という具体的な行動に移した点に、私たちは学ぶべきです。
目標や理想のキャリアを思い描いても、何から手をつけていいか分からず、立ち止まってしまうことがあります。しかし、トモコさんのように「今すぐ真似できること」は何かを考え、それを実行するという小さな一歩が、現実を変える原動力となります。
「袴姿で通勤する」という日々の行動の積み重ねが、「誇らしい気持ち」(=自己効力感)を生み出し、次のステップへのエネルギーとなったのです。
3.キャリアの軸は「原体験」の中にある
「初めて袴姿で通勤したときの晴れがましい気持ち」が、90年近く経っても鮮やかに蘇り、後の「美」の仕事へのきっかけとなったという事実は示唆に富んでいます。
日々の業務に追われる中で、私たちは自分が本当に大切にしたい価値観を見失いがちです。しかし、キャリアの軸となる情熱の源泉は、自分が「誇らしい」と感じた瞬間や、「心が震えた」ポジティブな原体験の中に隠されています。
キャリアに迷った時こそ、こうした原体験を振り返ることが、自分らしい仕事の「あり方」を見つける羅針盤となるでしょう。トモコさんのように、自身の「ありたい姿」を意識し、それを具体的な「かたち」にする行動を積み重ねること。それこそが、時代を超えて通用する自己実現への確かな一歩と言えます。
※本稿は、『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









