「やり抜く力=自制心」も脳の働きから生まれる
近年の研究で、人生における成功や満足を左右するのは、「才能」ではなく「やり抜く力」であると報告されています。
才能があっても、それを伸ばす努力を怠れば、最終的にはコツコツやり抜いてきた人の成功や幸福の総量には遠く及ばないということのようです。
このやり抜く力とは、要するに自己をコントロールする能力のことです。自制心と言ってもいいかもしれません。
ところが、人の欲求はとても強いので、それに反した「自分を律する」ことはそう簡単ではありません。
しかし、今、自分の自制心が低いと感じている人でも、この能力を鍛えることができます。なぜなら、自制心も脳の働きにより生まれるものだからです。
これまで話してきたように、脳の変化する性質を利用すれば、自制心をコントロールしている脳の配線を強化することができるというわけです。
この鍛え方のコンセプトは、筋力を鍛えるのと似ています。筋力を鍛えるときは重い物を持ち上げるなどして筋肉に負荷をかけます。最初は軽いものから始め、徐々に重いものに変えていくことによって、その負荷に対応するための筋力がアップしていきます。
自制心を鍛えるのもこれと同様に、あえて気の進まないことをすることにより、精神的な負荷をかけていくのです。
「やる気」ではなく「仕組み化」で誘惑を封じる
この自制心を鍛える方法には、「if‐thenプランニング」が非常に有効です。
最初は欲張らずに挑戦することを1つに決めます。
Photo:PIXTA
たとえば、あまり乗り気ではないのだけれど、健康のためにはダイエットしなければいけないときは、
(if)もし、間食に甘いものが食べたくなったら、
(then)ナッツを4粒だけ食べる。
といったように、その条件になったら、元の目標(ここではダイエット)を実現するための具体的な行動の計画を立てておきます。
ダイエットなら「甘いものを我慢してやせてモテたい」など、誘惑に打ち勝って続ける価値のあるものを見つけ、それを実行していくことで自制心が鍛えられていきます。
昔から行動が性格を変えるなどと言われますが、「社交的になりたい」と願っていた被験者がこの「if‐thenプランニング」を使った実験で、実際に友人を食事に誘ったり、パーティーに参加したりすることができるようになったそうです。
この自制心のトレーニングの流れは、次のようになります。
①抽象的な目標を決める(仕事の効率を上げたいなど)
②その目標にあった行動を探す(朝の時間の利用など)
③if‐thenプランニングを設定する(朝5時にはメールの処理をするなど)
④実行する
最初は1つから始めるようにしてください。
この行動計画を使ってのトレーニングには、波及効果があることが知られています。1つの目標をうまくこなせるようになると、設定した目標以外で自制心が要求されるものに対しても、自己コントロールができるようになるようです。








