
スキップの下手な錦織、上手な勘右衛門
「錦織友一だ」
「じゃなくて果物の」
パイナップルの名称を聞いているのに自分の名前を名乗ってしまう。笑いのお約束である。
余計なお世話ではあるが、ヘブンは絵にPINEAPPLEと一応、名称も書き込めばいいと思う。
パイナップルもスキップも知っている錦織。だが、いざスキップをやってみると、できない。
できなすぎるにもほどがある、硬い動き。
「本来はできるんだが、今日は(ふ、と薄く笑う)寝不足……」と言い訳する。
「錦織さんも人間だったんですね」
錦織は大盤石という松江随一の優秀な人物でありながら、いろいろ不器用でユニークな人物として描かれている。このスキップの下手さは最高だ。
吉沢はスキップについてこのようにコメントしている。
「今後出てくる錦織がスキップに苦戦するシーンでわざと下手にスキップするのがめちゃくちゃ難しかったです。やりすぎに見えない程度の面白さがあるラインを狙うのが難しくて苦労しましたが、徹底的に膝を曲げないというコツを発見しました(笑)」
徹底的に膝を曲げない動きがほんとうに面白い。映画『国宝』ではあんなに優雅にしなやかな身体表現をしていたのに。『ばけばけ』では正反対にガッチガチに硬い動きを再現している。こういう幅の広さもあるのだなと感心した。
一方、勘右衛門(小日向文世)はスキップを華麗にやって見せる。
スキップのできないトキ、錦織、フミ、そこそこできるサワ、うまい勘右衛門。これらの動きは、出演者みんなでスキップができない練習をやった成果だ。橋爪國臣チーフ・プロデューサーはこう語っている。
「スキップができない表現は難しいですよね。できる人ができない動きをするとわざとらしくなる。それをどう回避しようかと、スタッフとキャストみんなで“できないスキップ大会”みたいなことをやりました。みんなでワイワイやって楽しい時間でした。そんな遊びのようななかから、みなさん、それぞれスキップができないアイデアを考えついていって。吉沢さんは手と足が左右同じ側が前に出てしまうというのを思いついたようです。台本を書いている最中に、小日向さんには念のため『スキップできますか?』と確認しました。『できるけどそれなんか関係あるの? 時代劇だよ?』と言われて。『関係あるんです』と言ったら、その場でスキップを披露してくれました(笑)」







