蚊帳を張ったトキの思いやり

 勘右衛門はスキップを上野久作(立野空侑)と上野新作(上山就暉)といった子どもたちにも教える。その軽やかなステップに子どもたちが感心していると、彼らの祖母・上野タツ(朝加真由美)が現れる。

 タッタタッタとスキップのリズムが、勘右衛門の胸のときめきに聞こえてくるようだった。

 夜、トキが買ってきたパイナップルが3つ、ヘブンの家に鎮座ましましている。

 ヘブンは今夜も仕事。でも、トキが隣の部屋で何かしていて、その物音がやたらとガタガタしてうるさく、ヘブンはいら立つ。

 仕事中は物音をさせるなと言い含めてあったのに、守らないトキにヘブンは「ゴクロウサマ」「イキマショウ」「アバヨ」と「今日は帰って」を意味する言葉をいろいろ発する。

 トキは「クビ」かと焦って「ノーアバヨ」と抵抗するが……。

 トキは帰宅してフミに怪談を聞かせてもらう。それはたぶん、ろくろ首の怪談だと思われる。「クビ」にされそうなとき、「首」の怪談で心を癒やすというなんとも自虐的なトキだった。

 トキが帰り、仕事を終えたヘブンは、寝室に蚊帳が張られていることに気づく。蚊の絵が張ってあり、蚊帳のなかに入れば蚊に刺されないと絵で示した。まるでテントのようだとヘブンは「すばらしい」とご満悦。蚊帳は西洋の天蓋(てんがい)付きベッドのようだし、淡い光が幻想的で、ヘブンの好みには合うだろう。

 トキがうるさい音を立てていたのはこのせいだったのだ。これでクビのカワが今夜もなんとかつながったことだろう。

 蚊に刺されないように工夫を凝らしたトキの思いやりと、それを絵で伝えた機知。スキップでふざけてばかりいるように見せながら、いい話でまとめるふじきみつ彦の手腕。