では仮にトライアルと西友がともにこの試練を乗り切った場合には何が起きるでしょうか。もしそうなると、世の中の経済評論家が想定していなかった事態が起きます。
「どうなるの?まいばすけっとが負けてなくなっちゃうの?」と心配になるかもしれませんが、そうではありません。
トライアルGOが成功することで起きることは、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンそれぞれが首都圏で廃れて、コンビニ各社の売り上げが半減する未来です。
もともとまいばすけっとのような業態は俗に「コンビニキラー」と呼ばれています。弁当や総菜ならばコンビニで買ったほうがおいしいのですが、それ以外の商品はかなり割高です。実際、日清のカップヌードルはコンビニ店頭では255円と50円以上も割高です。スナックにしてもビールにしてもアイスクリームにしてもコンビニで買うとかなり高くなってしまいます。
ここ数年のインフレと実質賃金の目減り傾向が続いた結果、大衆のふところはかなり寒くなってきています。そのせいでこれまでは気にしなかったコンビニでの買い物について、生活防衛のためには控える必要が生じています。最近のセブンの経営苦境はこれが一因です。
それで、アンダークラスと呼ばれるような消費者層は最近ではコンビニを使わなくなりました。その上の中流の下の層でもコンビニで買うのはおいしい弁当やコーヒーぐらいで、ペットボトル飲料やスナックはスーパーやドラッグストアで買うという購買行動が増え始めています。これがまいばすけっと躍進の背景です。
そこでトライアルGOのコンセプトを思い出してみましょう。トライアル本部が開発した競争力のあるお弁当メニューを、西友の基幹店舗の厨房で製造し、それをサテライトのトライアルGOの店舗に配送し、スーパー価格で販売する。これは中食でもコンビニを倒せるイノベーションです。
もともとトライアルGOにはもうひとつイノベーションの可能性があります。トライアルは小売業に参入する以前はDXの会社でした。その強みがあるので店舗オペレーションへのDXの導入では先進性があるのです。







