コンセプト的には十分対抗可能とされているトライアルの首都圏進出ですが、開業したばかりの首都圏1号店を覗いたところ、前途多難と思われる不協和音を垣間見ることができました。

 店頭にはトライアルが自信を持つ弁当やおにぎり、ざくざく食感のシュークリームなど、これまで首都圏であまり見たことがないようなトライアルの人気商品が並んでいました。

 トライアルGOの面白いところは、この弁当やおにぎり、スイーツなどの中食カテゴリーの商品がコンビニ並においしそうなのです。

 人気商品がロースかつ重343円(税込、以下同じ)です。結構なボリュームなのに、この価格設定。西日本中心に展開するトライアルで人気の商品を首都圏に上陸させたことで、この先の首都圏での対抗力を感じさせる船出です。

 概して商品については競争力があると感じる一方で、経営戦略の専門家の視点で見ると大きな不安を感じさせる要素があります。具体例で話したほうが早いでしょう。

 トライアルGOから徒歩5分の西荻窪駅に西友の店舗があります。今、西友でもトライアルの傘下に入ったことでトライアル×西友の一大キャンペーンが行われています。

 トライアルのかつ重弁当は西友西荻窪店でも大きな面積で販売されています。三元豚ロースのかつ重なのですが、その価格が299円。300円でお釣りがくる価格です。なぜか5分の距離で価格が違います。西友のほうがトライアルGOより安いのです。

 ではどちらが適正価格なのでしょうか?首都圏の郊外にはすでにトライアルの大型店が進出しています。そこでのかつ重の価格は西友と同じ299円です。つまり大型店では安いかつ重を、配送に追加のコストがかかるサテライト業態ではコスト分を上乗せして販売するという形に見えます。

 そもそも、その考え方自体に疑問があるのですが、他にも不思議に感じることがありました。

 私が小売業を観察する際には売れ筋の定番商品の価格をベンチマークとして取り上げます。日清のカップヌードルはトライアルGOでは204円。これはまいばすけっとの204円を意識した同じ価格設定になります。ところが5分離れた西友では同じカップヌードルを161円で特売しているのです。