外国人の女性写真はイメージです Photo:PIXTA

人口が世界一となり、GDPがイギリスを追い越し世界第5位にまでなったインド。今後も急成長が見込まれるインドにおいて、ヤクルトやPayPayといった日本企業も進出している。中間層の拡大が見込まれるインド市場で勝つために、日本企業はどんな仕掛けを準備しているのだろうか。※本稿は、朝日新聞記者の石原 孝・伊藤弘毅『インドの野心 人口・経済・外交――急成長する「大国」の実像』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

停電が多く冷蔵庫が使えない街に
ヤクルトをどう根付かせるか?

 スパイスが利いた食事をとるからだろうか、インド人は極甘のスイーツにも目がない。砂糖たっぷりのチャイはもちろん、ドーナツに似たお菓子をシロップに漬けた「グラブジャムン」やお祝い事に出される揚げ菓子の「ジャレビ」など。甘さが口の中を癒やしてくれるが、「甘すぎる」と敬遠する日本人も少なくない。

 一方で、最近は、中間層や富裕層を中心に低カロリーや砂糖が少なめの健康志向の商品も店頭に並んでいる。その波に乗ろうと、奮闘するのがヤクルトだ。

「なんだそれは?」

 ヤクルト本社のインド子会社で社長を務める天野英治さん(58)は2006年、ニューデリーに初めて赴任したころのインド人の反応を今も鮮明に覚えている。世界一をうかがう人口大国への進出に、社内の期待は高かった。日本人におなじみのパッケージを現地の人に渡して飲んでもらうと、「おいしい」と感想が返ってきた。

 味は受け入れてもらえそうだ。でも、インドでの知名度はゼロに近い。都市部で市場調査を重ね、健康に気を使う富裕層や中間層をターゲットに据えた。