マンゴー風味のヤクルトで
起死回生を果たす
東京本社の開発担当者や工場長の岩間さんらが試作を重ね、完成したのは、おなじみの味にさわやかなマンゴー風味を足し、健康志向の人にも喜ばれる低カロリーの商品だった。
天野さんは「これまでは数年はかかっていたが、各部署の協力で1年足らずの異例の早さで新商品を販売できた」と話す。
翌年7月末、5本パック100ルピー(約180円)で「ヤクルトライト マンゴー風味」の販売を開始。中間層が利用する都市部のメトロ(電車)の全車両に広告を出してPRした。最初の1カ月で販売の12%をマンゴー風味が占め、全商品の売り上げも底上げした。
顧客の1人で、首都ニューデリーに住むパンチャン・ナグパルさん(71)は「私たちインド人はマンゴーに親しみがあるし、香りも好み」と笑みを見せた。
同書より転載 拡大画像表示
インドの調査機関の予測では、20年度に約4億3000万人だった国内の中間層は、46年度には約10億人になり、富裕層は8倍近く増えるとみられている。天野さんも、インドの成長性に期待を寄せる。
「マーケットが大きいインドは、将来の希望しか見えないような国。苦労も多いが、膨大な中間層を取り込めれば大きなチャンスがあるはずだ」
GDPは世界5位に成長も
貧富の差は広がるばかり
インドの国内総生産(GDP)は、かつて植民地としてインドを支配した英国を抜いて世界5位になり、23年には3兆5499億ドルになった。だが、1人当たりのGDPで見れば2600ドル(約37万6000円)程度で、世界で100番目にも入っていない。中国の1万2614ドル、日本の3万3849ドルとの差は大きい。
世界銀行によると、1日2.15ドルを下回る生活をするインド国民の割合(極度の貧困)は、2011年度の16.2%から22年度には2.3%まで改善した。







